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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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予定外の参加者

「あ、あれ……ここは……」


 目を覚ました僕がいたのは、知らない部屋だった。部屋には大きなモニターが一つとドアが一つ。そして、知らない人が一、二、三……合計で五人いた。


「目覚めたようだね。君も誘拐され、ここに連れて来られたのだろう?」


 優しそうなおじさんが僕に近づいてそう言った。デスゲームだとしたら、序盤で死ぬタイプだろう。そう、デスゲームなら。


「やっと目覚めたのねお寝坊さん。あなたも噂くらいは聞いたことあるでしょ? 殺風景なこの部屋がスタート地点。ふふふ、間違いないわ。始まるのね……!」


 綺麗なお姉さんがそう言った。他には、舌なめずりしている危ない雰囲気の男、中学生くらいの少女、壁に背中をつけて腕を組んでいる男がいた。


「くくくくっ、楽しいデスゲームが始まるぜぇ」

「こ、怖い……」

「……フン」


「さあ、立てるかい? 手を貸そう。薬か何かの効果が残っていて、ふらつくかもしれないから気をつけて」


 僕はおじさんの手を取り、起き上がった。その瞬間、モニターが点き、そこに不気味な人形のようなものが映し出された。どうやらこの件の首謀者があれを介して話すらしい。全員がモニターをジッと見つめる。


『やあ、おはよう。ここにいる諸君、五……六名にはこれよりゲームを始めてもらう。生き残るのは一人だけ。勝者には望む物が一つ与えられる、そう、これは死の――』


 ――プルルルルル


「え、電話?」

「あれ? 君のかい? 没収されなかったの?」


「あ、いえ、その……」


『没収したはずだ。もう一つどこかに隠し持っていたのか?』


「へっ、ケツの穴にでも隠してたか?」

「汚い……」

「フフッ」


「ち、違いますよ!」


 僕はそう否定したけれど、スマートフォンは尻ポケットに入っていたので、なんだか当たらずとも遠からずといった感じだった。スマホをポケットから取り出したタイミングで、ちょうどドアが開いた。


「あ、誰か来たわ」


『その仮面の男に大人しく渡すんだ』


「え、あ、はい……」


「あ、あの、い、今、助けを呼べたんじゃ……?」

「いや、そんなことをすれば、彼は容赦なく殺されていただろう……」

「いいからさっさと始めようぜぇ……楽しいデスゲームをよぅ」


『では、説明に戻る。その扉の向こうには――』


 ――プルルルルル


「え、また君かい?」

「ちょっとあんた! いくつ隠し持ってるのよ!」


「ち、違うんです、これは……あ、また来た」


 弁解しようとしたところで、仮面をつけた人がまたドアから部屋に入ってきて、僕に手を差し出した。


『その仮面の男に渡すんだ』


「はい……」


『……もうないだろうな? よし、これより諸君らに始めてもらうのは恐怖の――』


 ――プルルルル


「嘘でしょ……あんた、本当にいくつ持ってるのよ……」


『いくつだ』


「一つですよ! ただ……」


「そもそも、誰からかかってきてるんだい?」


『そうだ。ここは圏外のはずだ』


「そ、そんなことは今、どうでもいいじゃないですか……早くデスゲームを始めましょうよ!」


「なんで乗り気なのよ。あ、仮面の人がまた来たわ」


『仮面の。出てみろ。全員に聞こえるようにスピーカーホンでな』


『……わたし、マリー。今、あなたがいる建物の外にいるの』


「え、これって、え?」

「人形が追ってくる系のあれかい? 怪談話の」


「あ、はい。あ、ちなみに今の声を聞いた人は呪われるみたいで、僕の友達は全員死んでしまいました」


「はぁ!? あんた、はぁ!?」

「ええ!?」

「おいおいマジかよぉ!? デスゲームはどうなるんだ!?」

「そ、それどころじゃないんじゃないんですか?」

「フ、フーン……」


『私もか』


「あ、はい」


「え、自分もですか?」


「あ、はい、仮面さんも」


「普通に喋るんだ」


 ――プルルルルル


「ま、またかかってきたわよ!」

「出ちゃ駄目だ! 確か、電話に出る度に近づいて来るんだろう!?」


「いえ、出なくても距離を詰めてきます!」


『問題ない。このデスゲームはここ、スタート地点から罠だらけの部屋を一つ一つクリアして通り、ゴールを目指すというものだ。裏を返せば出口からここに到達するのも困難だ。例えば最終ステージでは張り巡らされたレーザー光線に触れないように部屋から出なければならないし、床には地雷が埋め込まれている。さらに、その一つ前の第四ステージは水中迷路だ。落ちているボンベに記号が書かれているが、正しいものを選択しないと逆に毒を吸うことになる。そして第三ステージは迫りくる壁の部屋。さらに壁の穴から炎が噴き出し――』


「すごい勢いで情報を出してきたわ……」

「やめろ! 俺は楽しみにしてたんだぞ!」


『あと実は、このスタート地点の壁はマジックミラーになっていて、隣の部屋に私がいる』


「え、そこにいるの!?」


『そうだ。実は第四ステージの水中迷路には隠し扉があり、この部屋に繋がっている。最終ステージの出口の扉の先には外に通じている階段があるが、その階段を踏むと四方から銃弾が浴びせられ、死ぬことになっているのだ』


「とんでもない仕掛けね!」

「だから喋んな!」


『怖いと饒舌になるタイプなんだ』


「知らないわよ!」

「あ! ドアが叩かれたよ! もうそこまで来ているんじゃないか!?」


 ――プルルルルル


「よ、よし、電話に出てみましょう!」


「あんた、なんか嬉しそうね」


『わ、た、し、マリー。今、その部屋のドアの前にいるのぉ……』


「今、ちょっとキレてなかった?」


『仮面の、ちょっとドアを開けて様子をみろ』


「嫌ですよ!」


「あ、ちょっと待って! じゃあ、その迷路からここに戻ってきたらどうなるの?」


『その部屋の床の一部が開くことになっている。実は出口はスタート地点にあったというやつだ。それで、ああ、少し待て』


「やあ、どうも。それで、このリモコンのスイッチを押すと、この辺りが開いて外へ出られるという訳だ」


「あ、普通に出てきたわ」

「壁が開くんだね」

「デスゲームは!?」

「まずいです! ドアが変形してます! すごい力!」

「フーッ! フッー!」


「じゃあ、早く脱出しましょう! みんな一緒に!」


「やっぱり嬉しそうね、あんた」


「みんなで助かることが嬉しいんです! さあ、早く行きましょう!」


「ああ、これでよし、行くぞ」



 こうして僕たちは恐ろしいデスゲームの舞台から脱出することができました。でも、このゲームマスターも実は雇われた人で、本当は別に黒幕がいるそうです。

 それは政界を牛耳る大企業のトップ。そして各地の優勝者を集めた最大のデスゲームを開催する予定らしいので、今度はそこに匿ってもらおうと考え、僕らは車に乗り込んだのでした。

 

 いやー、偶然、誘拐現場に居合わせて、咄嗟に巻き込まれにいって、よかったぁ……。

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