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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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セックスアンドロイド法に反対

 とある会議室。繰り広げられる舌戦は時間が経過するごとに白熱化していった。


「だ・か・ら! セックスアンドロイド法には反対です!」


 そう声を上げるのは『女性による女性のための会』の代表のミチコ氏である。


「えー、ですからですねぇ……それが女性のためにもなると言いますかぁ」


 と、押され気味なのは問題の法案を提出せんとする議員、ムネオ氏である。


「結局、あなた方男性は女性を道具としか思っていないんです! 口にするのも汚らわしい、性の道具としてね!」


「そうよ!」

「その通りだわ!」

「法案はんたーい!」


 ムネオ氏と向かい合い座る、ミチコ氏の後ろに並び、援護射撃を浴びせる女性会員たち。カメラを構える記者たちもその位置取りからして彼女たちの味方のようだ。多勢に無勢。ムネオ氏はちらと隣に視線をやるが、秘書はその迫力に圧倒され、顔を上げることもできない。


「道具と言われますと言葉が強いと言いますか……。道具と言うならむしろアンドロイドがそれと言いますか……」


「何よそれ! アンドロイドも人と同等でしょ!」


「そうよそうよ!」

「人間そっくりじゃない!」

「はんたーい!」


「ええ、ええ、ですのでその、少しばかりの規制を盛り込んだ法案と言いますか」


「少しばかり!? 何なのよそれ! 女性の権利はどうなるの!?」


「ええ、そう声を荒げずに……その、結果女性のためになると言いますか……」


「何だかんだ言って女性を男の性の捌け口にするつもりでしょ! 冗談じゃないわよ!」


「御託を並べて男に都合のいい法案を作りたいだけでしょう」

「ホント、男って身勝手よね」

「反対よはんたーい!」


「結局あなた、アンドロイドに嫉妬してるだけでしょう」


 と、その言葉に両陣、増々ヒートアップ。両者立ち上がり、掴みかからんばかりに唾を飛ばし合う。


「だから新法には反対だって言ってるでしょ! 反対反対反対反対!」


「ですからねぇ! 確かにセックスアンドロイドが流通してから犯罪率は低下したんですが、同時に出生率もですねぇ!」


「は!? それは男側の都合でしょ! 産む産まないは女性の自由よ! 産む機械になれって言うの!? クズ! ゴミ!」


「そんなことは言ってないでしょう! そもそもそれを言ったらあなた方はヤル機械と化しているでしょう!」


「まー!? 今の聞いた!? この人でなし! 最低!」


「ハゲ! ブサイク! チビ!」

「中年太り! 嫉妬の塊!」

「アブラマシムシ!」


「な、人を侮辱するのはやめなさい!」


「うるさいわよ! エーくんとは離れないんだから! 規制反対!」


「そうよ! 女性にセックスアンドロイドを使う自由を!」

「結婚しない自由を!」

「男性型セックスアンドロイド規制にはんたああああぁぁぁい!」


 ムネオ氏は頭を抱え、女性たちに背を向けた。セックスアンドロイドが出始めた当初は男側がのめり込み結果、性犯罪などは減ったものの不快感を露にした女性たちが声を上げ、その結果制定された法案により規制。

 しかしその後、女性向けセックスアンドロイドが流通するとそれが大流行に。

 盛り場や夜、出歩くことが少なくなり、結果、また女性の犯罪被害は減ったのだが、のめり込みすぎて女性は生身の男に見向きしなくなった。

 出生率が危ぶまれる中、政府は女性用セックスアンドロイドの規制にも打って出ようとしたが抵抗はすさまじく、今回も見送りになりそうだと、背に罵声を浴びせられながら、よろよろと窓に向かって歩き、外のデモ隊を見下ろしたムネオ氏は一人、そう痛感したのだった。

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