表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

619/705

お盆はどこも大渋滞

 お盆と聞いて、何を想像されますか?

 お墓参り、帰省、実家、お供え物、迎え火、そして……渋滞。

 そう、毎年のことながら大渋滞の下界。しかし、それは天国においても同じことでした……。



「クソッ! さっきから、全然、す、進んでないぞ!」


「し、仕方ないさ、この大混雑、ま、まったく動けん」


「しかしこんな、大量に!」


「毎年、人はし、死ぬからな」


「そもそもなんで、この通路は、こんなに、狭いんだ!」


「て、天国の門が狭いからな、それに通じる道もまた、狭い、というわけだ。ふふっ、二つの意味で狭き門だな!」


「いや、別に上手いこと言ってないと思う……いや、そんなことよりも、ん? お、おい、そこのアンタ! アンタの、その髪型からして、相当昔の人だろ? 一旦、引いてくれないか? 俺は孫が生まれたばかりなんだよ!」


「……断る、下界に降りることができる唯一の機会。それも初日に降りることで長く滞在することができる。

拙者はこの国のために命を捧げた。死して尚見守る義務があるのだ」


「くっ……立派な奴に話しかけちまったか。ん、じゃ、じゃあ、そこのじいさん! アンタ確か、この前『いやーワシ、子孫残せずに家系図終わっちゃったよ』って笑ってたな!

言っちゃ悪いが待っている人も会いたい人もいないはずだ! 辞退してくれよ!」


「断る!」


「なぜだ!」


「女風呂を! 覗く!」


「は!? そんな理由で……」


「そんな理由とは何じゃ! 一年間待ったんじゃぞ!」


「そうだ! プール!」

「女子更衣室!」

「温泉!」

「サウナ!」

「男風呂!」

「海!」

「拙者は女子高生のスカートの中!」


「クソが! こんなやつらがどうして天国に……」


「昔は審査が緩かったんじゃ! 今は違うがなぁ! ざまーみろ! お前の子孫、地獄行き! ヘイ!」


「地獄行き! 地獄行き!」

「地獄地獄地獄行き!」

「セイ! ホーオッ!」

「ホーオッ!」

「セイ! ヘール!」

「ヘール!」


「クソ野郎どもが! こんなの神が知ったら……あ、おい! そこの天使! そうだ、こっちにきてくれ! 俺を引っ張り上げてそのまま出口まで運んでくれよ!

ほら、この手を掴んで……おい、指しゃぶってないでさ……あ、ああああ! クソガキ! てめ! 鼻の下に擦り付けやがって! おい! 降りてこい! あ、唾を吐くな! クソ! 誰か! そいつを止めろ! 掴め!」


「よし、俺がやる! お、足の指を掴んだぞ! 痛! 蹴るなクソガキ! 近くのみんな! 俺の腕を掴んでくれ!」


「いいぞ! 引きずり下ろせ! 殺せ! どうせ死なないんだ! 殺せ! 羽をむしれ!」


「こいつ噛みやがった!」

「オラァ!」

「このガキ! いっつもニヤついた顔で上から見下ろしやがって!」

「そもそもお前らが誘導しろや!」

「さっきも唾吐いてたろ!」

「サボんな!」


「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!」


「はっははぁ! ざまーみろ! ……ん? 見下ろす……協力……足元には比較的スペースが……おい、みんな! 肩車だ! 隣の奴をなんとか肩車してスペースを開けるんだ! そうだ! いいぞ!」


「こっちは三段だぜ!」

「じゃあ、こっち四段だ!」

「五、行ったぞ!」


「行ける行ける! みんないいぞ! さあ、行くぞ! 下界に! セイ、ホーオッ!」


「ホーオッ!」「ホーオッ!」「ホーオッ!」「ホーオッ!」「ホーオッ!」



 もし、道路が渋滞で退屈になったら窓の外に目を向けてみてください。空に白い龍が見えたのなら、それは連なる私たちのご先祖様なのかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ