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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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新種発見

 仕事場から家に帰ってパッパッパッとテレビのチャンネルを変え、面白いものはやってないかと眺めていると、どの局も同じような画面。つまらない会見かと思いきや、重大ニュースらしい。テレビに近づき画面上部のテロップを見ると【新種の生物】とあった。

 勿体ぶっているのか何なのかまだその姿は映し出されていないが、この熱量からして虫や魚じゃなさそうだ。疲れているのでさっさと眠りたいところだが情報収集、何にでも触手を伸ばすのは大事だ。

 ストレッチをして画面に映し出されるのを待っていると、何ともまあ……なんだあれ?

 

 確実に言えるのはそう……不快感。赤ちゃんの泣き声、年老いた母の咳。当人に悪気があるわけじゃないから声を荒げ、注意するわけにもいかないような感覚。ああしかし、不快だ。そうだ、私はこれが本能的に嫌いなのだ。

 この生物が見つかった経緯を説明している現場のアナウンサーも次第に苦虫を噛み潰したような顔に。

 発表会場には他にもテレビ関係者などがいるようだが、その生き物が入っている透明のケースを囲む輪から離れる時はどいつもこいつも道に落ちている犬の糞を見たような顔をしていた。やはり間近で見ると相当不快なのだろう。

 それはそうと、いずれは動物園か何かで展示されるのだろうか。しかし、わざわざ見に行くかは考えてしまうな。何せ不愉快。こうして画面越しでもその姿が映し出されるたびに目を背けたくなる。

 終始、何かを喚いているが、それを掻き消したのは会場にいる者の悲鳴。そして笑い声。

 あの生物が突然、糞尿を垂れ流したのである。ああ、何とも醜い生物か。透明なケースの中に黄色の液体が溜まっている。


 と、もしや先程の喚きはトイレか何かを要求していたのか? だとすればそれなりの知性はありそうだが……ペットレベルだな。

 アナウンサーの説明によると宇宙船の真似事のようなものでこの星に不時着したらしいが、あれが奴らの星に君臨している種族なのか? 

 いや、実験用の生物かもしれない。何にせよ程度が低い。我々とは大違いだ。

 しかし、恥じらいというものはあるらしい。顔を隠している。……ふむ、見慣れてきたのか可愛げがあるようにも。と、私がそう思ったのだから他の者もそう思うかも。もしそうなら需要があるかもしれない。うんうん。やはり世の中の動向をチェックするのは大事だな。

 宇宙局に勤める友人からどこの星から来たのか聞き出し来週あたり、社の宇宙船で現地に飛んでサンプルを捕獲しに行くとしよう。まったく、どこにビジネスチャンスがあるかわからないものだな。

 と、ああ、また鳴いているな。覚えておくと役に立つかもしれない。


 ミニキィーバケモー! クナー! ミルナー! アアアアア!


 だとさ。はははははははは。

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