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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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エアコン法

 年々増す暑さに蝉も元気がないどころか、数が減ったように思える。

 反対に人口は増し、プールも海も人だらけ。避暑地も暑苦しいほどだ。まあ、金に余裕がない俺には行く機会も気概もなく、家でエアコンをつけてこうして、ゴロゴロとテレビで見ているだけなんだがな。


『地域の消費電力の基準値を超えました。設定温度を1度上げます』


「はいはい」


 返事をする意味はないんだが一人暮らしの身。たまにはこうして声を出さないとな。

 それで今の設定温度は……うん、二九度か。まあ、外に比べればマシだ。

 何年か前に政府が各施設及び、家庭のエアコンの設定温度を遠隔操作で管理するようになった。人口過多による、電力不足と海外に向けてエコをアピールするためだとかで、こっちにできるのはスイッチのオンオフと冷暖房の切り替えくらいだ。

 不便かつ迷惑でしかないが仕方がない。税金も絡み、管理外のエアコンは販売禁止だからどうしようもないのだ。


『地域の消費電力の基準値を超えました。設定温度を1度上げます』


「どうぞお好きに」


 そう、どうぞお好きに。移民共の中にはエアコンを改造し、好き放題使ってるのもいるらしいが、重ね重ねそんな気概はない。おまけにバレると捕まるしな。


『地域の消費電力の基準値を超えました。設定温度を1度上げます』


「勝手にしてくれ」


 もうじき夕方だ。少しは熱さもマシになる。とは言え、エアコンの電源は入れたままだがな。

 人口もそうだが気温も鰻上りだ。まったく、地球もこの国もどうなっちまうのかねぇ。と、言った具合に未来のことなんざ憂いても仕方がない。まずは身近なこと。さ、夕飯の支度でもしよう……。





『地域の消費電力の基準値を超えました。設定温度を1度上げます』


「はーい、おやすみなさい」


 もう夜中だってのに、そんなに電力が足りなくなるもんかね。

 まあ、熱帯夜。どの家庭もエアコンをつけなきゃ眠れないだろうから不思議ではないが……。まあ、十分涼しいだろう。あー、ねむい……。




 ん、ここは……ああ、夢か。ははぁ、しかしベタすぎて恥ずかしいくらいだ。砂漠だとよ砂漠。まあ夢に見るほど暑いのはわかるがな。

 ……暑いな。本当に夢か? こっちが現実なんてパターンも……あるわけないか。

 ……いや暑い、暑すぎるぞ。起きよう、どうせなら涼しい南極とか北極の夢が見たかった。

 さあ、起きろ……起きろ……。




「う、うぅ」


 暑い。まだ暑い。今、何度だ? エアコンが切れ……たわけではない。

 リモコン……ああ、そこだ。

 う、手が、体が震える。

 上手く体が……熱中症か……?

 よし、掴んだ……温度は……

 え、なんで……暖房に……

 壊れて………? スイッチ……切れない……

 ああ、なぜだ……また上がった……しかも音声なしに……これは……意図的に……?

 これは……まさか……政府の……人口……増えすぎた、俺たち、高齢者の……間引き…………

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