収納マニュアル
さて、冷凍庫の収納法だが、これを効率よく行うためには、まず物を保存パックに入れる必要がある。
そしてこれは迅速に行わなければならない。数が多いだけに、ダラダラしていては保存後に傷み、不純物が出る可能性が高まる。
保存パックの上部には期限と保存した日付を刻印すること。そして期限が近い物を纏めて収納するのが良い。
なるべく、期限が短い物を出しやすい前の方に入れておくのが望ましいが、今後も追加で収納することを考えると、手間がかかるので大まかに纏めて収納するだけで良い。
そして収納の際は保存パックの上部に記された期限が見えるように、なおかつ無駄なく、パズルのように物の大きさ、重さを考えて積み重ね、隙間を無くすことが肝心である。
隙間があると扉の開閉の際、外の暖かい空気が流入、また内部の冷気が逃げやすくなる。
ここでも作業は迅速に行わなければならない。乱雑に扱い、物が痛むことがあってはならないと丁寧に行い、冷凍庫の扉を開けた状態が長く続けば、結果その方が痛むことになる。
何より、冷気を逃がしては冷凍庫内を再び冷やすのに電力を大きく消費するため、電気代がかさみ、大変好ましくない。故に前述の隙間を無くすことは大事なのである。
そして、デッドスペースを発見した際は、速やかに対応、新たに収納すべし。
また、収納の際にジャンル別に振り分けようと考える者もいるが、今後も続けるその手間を考えると現実的ではない。やはり期限別に纏めておくのが良い。
そして、期限がない物についてだが、そのまま収納しては徒らにスペースを圧迫するので、必要な部分だけを残し、あとは破棄してかまわない。
その後、もし出す必要がある場合、速やかに専用の機械まで運び、繋げる。
しかし、これは杞憂。
殆どの被害者遺族は無期懲役囚と会話しようとは思わない。警察の取り調べも移送された後では要請されることは稀だ。そのまま頭部は冷凍保存し、保管すればよい。
また、最近では囚人を冷凍し、刑期を終えたら釈放するという現制度に反対する声も多数上がっている。
その主な理由は『寝て起きたらもう釈放。体感一日もないなら罪を償った事にはならないのではないか』というものだが、その意見に感化される必要はなし。
また、たとえ勤務時間外に、そう詰め寄られても殆どの囚人が解凍と同時に死んでいることを漏らしてはならない。これは保持すべき業務上の秘密である。口外厳禁。
そして、その原因はひとえに技術力不足にあると思われるため、保存パックに入れる際の手順のミスということではないので安心されたし。
人口過多による、貧困、犯罪者の増加の流れは、これから先も続くことが予想される。
冷凍設備完備の刑務所の建築が完了し、配属された各刑務所所長は当マニュアルを必読し、速やかに囚人の収納を行われたし。




