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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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探検隊の成果

『太古に生息していたと言われる幻の生物。

我々探検隊は目撃証言を頼りに海を渡り、聳え立つ山々を越え、その密林へ足を踏み入れたのである!

行く手に立ちはだかるは、大自然からの第一の刺客!

恐ろしい吸血生物、チュパカブラ!

我々は鉈で応戦! 見事、奴を撃退したが大自然が手を緩めることはない!

第二の刺客、ツチノコの大群が我々に牙を剥く!

踏み散らし、どちらが上かをわからせてやった我々は更に奥へと進む!

飛び交うスカイフィッシュを叩き落とし!

河童を力でねじ伏せ!

メデューサの首を切り落とし!

ユニコーンの尻に蹴りを入れ!

グリフォンの羽をむしり取り、そしてついに我々探検隊は偉大な発見をしたのだった!』



「……とVTRをご覧になっていただいたわけですが……あれ、皆様、皆様?」


 明かりが点いた会場内。椅子に座る面々は呆れた様子でため息をつく。


「まーたいつものデタラメ。どうせ今回も空振りだったんだろ?」

「そうだそうだ、毎度同じような映像でもう眠くなっちまったよ」

「いくらエンターテイメントと言っても、そろそろ本物を見せてくれよ」

「はっきり言って飽きたんだ」

「番組も打ち切りかな」


「と、手厳しいご意見をはははは……。えー、記者の方々、テレビ関係者様、そして出資者である資産家の皆様。ご安心ください!

今回はここに現物を持ってまいりました! おい、アレをこっちに!

……よーし、さあさあ来ましたよ。この檻の中にいますからねぇ。

さあ……心の準備はいいですね?

この布を取れば、皆様は今まで直接見たとこがないあの、え、ああ、はい、御託はいいと。では! どうぞ!」


 隊長が布を取った瞬間、息を呑む面々。やがてざわめきだす。ひそひそと話し声。しかしそれは嘲笑ではなく、信じていいのか、手放しで喜んでいいのかという不安と期待からのもの。

 隊長は畳み掛けるように、高らかに言った。


「そうです! 正真正銘、野生のそう! 野ウサギです!」


 おおー! と、どよめく会場内。

 檻の中にいたのは薄い茶色の可愛らしいウサギ。耳をぴょこぴょこ動かし、辺りの様子を窺っているようだ。

 会場は興奮しつつも、どこか和やかな雰囲気に。しかし……。


「……いや、待て! それ、角を取ったジャッカローブだろう! インチキだインチキ!」


 再び、どよめく会場内。多くが反論を期待したが肝心の隊長の目は右へ左へ泳ぎっぱなし。目から鱗。衆人は怒りから手当たり次第、近くにある物を壇上へ投げつける。


「痛い! 痛い! やめてください! わかりました! わかりましたから! とっておきのものを見せます! ほら! 早く持ってきて! 助手! そうそこだ! そこに置いて!

ええ……ゴホン。さあ、改めまして皆様に今宵ご覧いただくのはそう、幻の、痛い! わかりましたから! さあ、布を取ります! ご覧ください!」


「おお……まさかそれは、にんげ……って毛を剃ったビッグフットじゃないか! ふざけるな! やれ! やっちまえ!」


「ひぃ! やめて! 落ち、落ち着いてください! ほら、映像の続きでも――痛い痛い! あああああ!」



『数百年前、人類は遺伝子技術の発展により自由に生き物を作り出せるようになった。

恐竜を復活させるだけに飽き足らず、様々な生き物を組み合わせ伝説の生き物を再現したのだ。

テーマパーク、ペット、そして兵器利用。国や企業間、更には犯罪組織の競争により、世の至る所で見受けられるようになった伝説の生き物たちは、ずさんな管理下からやがて脱走、既存の生物を蹂躙し独自の生態系を作り出し、人類は新たな生態ピラミッド、その下位に身を落とすことになった。

そして長きに渡る生存競争の末、人類は絶滅。

知と力を併せ持つ我々レプティリアンが地上に君臨することとなったのである。

人類の失敗、その教訓を踏まえ、遺伝子技術が禁じられた今、失われしロマン、遺物、幻となったかつての生き物を探し求める我々探検隊の歩みは決して止まらない!

そこに未知なる領域がある限り、冒険は終わらないのであった!』

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