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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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同窓会

「――と、いうわけで白栄高校同窓会、同級生全員出席を祝いぃぃぃ……かんぱああああい!」


「かんぱーい!」

「フゥゥゥゥゥゥ!」

「いよっー!」

「ははははは!」

「いいぞ委員長!」



「ははは、おっすおっす。いやー、委員長のやつ、すごい気合の入りようだったな。なっがいスピーチでさ」


「ああ、まあ先生の前だしな」


「え……まさか委員長のやつ、まだ先生に恋心を? 嘘だろ」


「いや、どうもそうらしい。情報通の下田によると時々、理由を作っては会いに行っているそうだ。アイツには驚いたよ」


「うへぇ。色んな意味で元気だなぁ……アイツ、まだおったつのかな?」


「たつ?」


「決まってんだろぉ? ナニだよナニ」


「そのジェスチャーやめろよ」


「へへ、お前はもう無理か?」


「まあ、自然な事さ」


「とか何とか言って羨ましいんだろぉ?」


「別にいいんだよ」


「自然ねぇ……ほら、アイツ、上沼。はははっ相変わらず美容整形続けてるんだとよ」


「ああ。あの子、そう言えば高校時代も確か整形したとか教室で自慢げに話していたな」


「そうそう、いやー、原型留めていないというか。まあ、上沼に限った話じゃないがな」


「ん?」


「ほら、中山なんて特にすごいぞ。あの胸! ギャグかなあれ」


「いや、下田が言うには旦那の好みに合わせたらしいよ」


「へぇー! 健気だねぇ。あ、それからアイツ、東川。聞いたか? アイツ、自分は作らないって言ってたのにとうとう作ったんだってよ!」


「え、じゃあ、あそこにいるのは」


「そう、はははっ、親そっくりだなぁ」


「まあなぁ」


「そうそう、西原、アイツなんてずっと眠ってたんだとよ」


「ずっと?」


「そ! 五十年だってよ。もう、起きたら浦島太郎状態だってさ! アイツそれを持ちネタにしてやがるんだよ」


「まあ、教室でもよく寝ている奴だと思ってたけどまさかなぁ」


「しかし、どいつもこいつも、まあ不思議なもんで面影があるが、あ……」


「ん、どうした? 急に黙りこくって」


「み、南野さん、あああ、相変わらず可愛い……」


「おいおい、お前も委員長のこと言えないな。漏らしてるじゃないか」


「え? あ。やべっ! クソッ! トイレで乾かしてくる! お前、口説きに行くなよ!」



 行かないっての。あーあ、北林のやつ、ガシャガシャとあんなに慌てて走って……。どのみちオイル漏れするような安物のボディパーツ使っているようじゃ無理だろうに。

 南野さんは確かに昔と変わらない、若いままだが生身の部分は脳だけで全身サイボーグだろう。

 あ、生身で若いままと言えば西原のやつ、あのコールドスリープ計画の実験台に立候補していたとはな。

 いや、東川も若いか。クローンを作って脳だけ取り換えるとはなぁ。なんの違和感も、繋ぎ目も見えないし、ひょっとしたらアイツ

クローンに成り代わられてたりして……なんて小説か映画じゃないんだからないか。

 中山の胸もクローンと同じ要領か。高校時代も付き合う相手によって髪色だのなんだの変えていたが、胸を四つにするとは、旦那が腕四本のドトロドイボノ星人だとああなるのか。

 しかし、上沼はあれでいいのか? もはや完全な球体だが……いや、本人がいいと思っているのなら口を出すだけ野暮だ。たとえ、整形のし過ぎで色々と麻痺してるとしてもな。それに考えようによっては、うん。丸というのは美しいものだ。月とか地球とかうん。……いや、月はあの事件で砕けたんだったな。

 開発の際のミスでの爆発と政府は言っているが本当の原因は隠蔽されているとも噂がある。

 下田なら知っているかな? 色々調べられるからな。

 しかしアイツもまさか肉体を捨てて脳をスキャンし電脳世界で生きるとは思い切ったことしたもんだ。

 アイツが言うにはあそこにいる先生と多分、他にも何人かは立体映像で、その姿かたちも自由に設定できるから、どれも本当の姿とは限らない。なのに委員長は先生にあんなにアピールして本体に会ったことあるのかな?

 まあ、高校卒業から六十年経っても生きてるということは先生も何か自分に手を加えているんだろうけどな。

 ……はははっ委員長のやつ。汗拭いている真似なんかして、あれは自宅で操作している自分そっくりのアンドロイドだろうに。


 しかし、他にも宗教にハマったやつ。怪しい商売を始めたやつ。ヤクザになったやつ。芸人になったやつ。宇宙海賊になったやつ。薬で巨大化したやつ。どいつもこいつも変わったなぁ。

 やはり俺だけだな。自然な人間は……。俺だけが寿命で死ぬんだろうなぁ……。


 それが正しいというのに、馬鹿どもめ。

 そろそろ始めるか。いや、終わらせるか。体に埋め込んだ爆弾はこの遊覧宇宙船もろとも、やつらを粉々に吹き飛ばせる。

 実際には離れているやつも同じことだ。爆発の光と音で接続している視覚と聴覚から本体の脳にダメージを与えることができる。


「みんなあぁ! い、いつまでもお美しい、せ、先生にもう一回、かんぱあああい!」


 ああ、乾杯。

 各地に散らばる同胞たちに。

 我ら、自然死主義者に栄光あれ。

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