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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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虚ろげなバー

「ふぅ……」


「おやおや、ため息なんて似合いませんよ、お嬢さん」


「ふ、ふふははっ! いや、似合うだろうに。

つい笑っちゃったよ、はははっ。んでアンタ、いつこっちに来て?」


「つい先程ね。ふふふ、隣失礼しますよっと

マスター、彼女と同じものを……それで、最近どうですか? 今夜は?」


「いや、最近も何もずっと変わらずさ……ははは、億劫になっちまってねぇ」


「まあ……わかりますよ」


「アンタもかい?」


「ええ、人前に出るのも体力を使いますからねぇ」


「そういうこった。ここぞという時のために取っておかないとね。

何せ、最近は中々話題にならないからねぇ」


「ふふふっ」


「何さ」


「いや、失礼。貴女、わざわざハロウィンの夜に出たのを思い出しましてね」


「ちょっと! それ言わない約束だろ! ……てっきり仲間かと思ってさ」


「女幽霊さん、人気だったそうじゃないですか」


「まあ、ふふん。でもコスプレと思われただけだから意味ないけどね。ねえ人魂?」


「彼に訊いても話せな……おお、点滅した」


「コミュニケーションは取れるのさ。それで、チュパカブラさんは最後にいつ人前に出たんだい?」


「もう十年前になりますかね……最後に出た時に、はははっ……。

丁度タイミング悪く、病気で毛が抜け落ちたコヨーテがその近辺で見つかりましてね。

私の正体はアイツって事になりまして……」


「それは災難だね……」


「まったくだ!」


「ああ、ビッグフットさん。どうも」


「おう! 俺なんてよ! 昔、着ぐるみ着て話題になった奴が現れてよ!

今じゃ、どこに出ても信じてもらえねぇんだチクショー!」


「着ぐるみねぇ。それも時代だね……精巧な着ぐるみに映像加工技術。

そのせいでせっかく世に出てもあたしらは偽物扱いされちまう」


「まったくですよね」


「え、今、上から? あ、どうもフライングヒューマノイドさん」


「どうも、皆さん。と、時代の話ですが由々しき事態ですよ。

ほら、あそこにいる口裂け女さん。

この前、久しぶりに出たと思ったら不審者扱いで

情報サイトに載せられたらしいですよ」


「まあ、あながち間違っちゃいないけどね」


「それに人面犬くんも野良犬扱いで通報されたとか」


「危ないって思いが先に来ちゃうのかね」


「そして……」


「ガハハハハハ!」「アハハハハハ!」「ギャハハハハハ!」


「……あの連中だね」


「まったく時代か……」


「あ、先輩方うっす!」

「こんばんはっ」

「どうもですー」


「ああ……こんばんは……その、アンタらって何だったっけ?

いや、悪いんだけど何回聞いても覚えられなくて……」


「えー!? 流石にちょっと老いすぎじゃないですか!?

俺はね、クレーマーを涼しい顔で撃退するイケメンっす!」


「私はデート相手の男のバカな言動を華麗に論破する女」


「ボクは鋭い事や巧みな事を言う幼児!」


「ハイ! ハイ! みなさんスタンディングオベーション! フウウゥゥゥー!」


「ははは……」


 都市伝説の登場人物が集うバー。

 忘れ去られ、燻り続ける彼らの憩いの場。

 それ自体もまた都市伝説。

 朝になれば霧のように彼らと共に消えていく。灯を少しずつ小さくしながら……。

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