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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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空からのメッセージ

 ある日、宇宙局が特殊な電波をキャッチした。

 これはまさか、地球外の知的生命体からのメッセージでは?

そう考えた彼ら。すぐにテレビの要領で映像に変換することに成功。

集まった政府の高官や軍事関係者と共に、モニターを食い入るように見つめる。


「お、おお……」


 ほとんど全員がそう声を上げたのも無理はない。

モニターに映し出されたのは息を呑むほどの美女。

 確かに宇宙人とわかる見た目だが

耳の形、肌や瞳の色といった僅かな違いで地球人とほとんど変わりない。

それどころかより魅力的に思える、と

その胸の谷間に釘付けになっている男共に女性職員一同は冷たい目つき。

 宇宙人が喋りだすと歓声が上がった。

見た目だけではなく、その声もまた美しいのだ。

しかも翻訳装置でも使っているのか言葉がわかる。

つまり、明らかに地球に向けられたメッセージで偶然のものではないということ。

彼らはウットリとその声に聞き惚れた。


『どうか私をお助けください……地球の皆様……お願いします……お願いします……』


 動画の再生が終わると一同、真面目な顔を取り戻し、腕を組んだ。

あの映像の美女。何と、クラリオンという名の星の姫であり

王である父親に望まぬ婚約をさせられたために地球に来たいというのだ。

こちらで結婚相手を見つけ、その婚約を破棄するのが目的。

それはそれで問題になりそうだが、大丈夫だという。

なんやかんや言っても父親だ。娘には甘い。既成事実。

結婚さえしてしまえばこっちのもの。

そして、これを機に地球との交流を始めたいとのこと。

 願ってもない話に男たちは浮き立った。

それにメッセージの最後、あの消え入りそうな声。

損得勘定抜きにしても助けてあげたい。

 と、こんな話、秘密にしようにも必ず誰かが漏らす。

尤もここだけでは抱えきれない話。職員たちはどこか惜しい気もしつつ世界に発表。

 世界の国々から選出された男たちと共に

宇宙船の着陸予定地点で歓迎の用意をして待つことになった。

 当日、世界中から報道陣や野次馬も詰め掛け、お祭りムード。しかし……


「……来ないな」

「時間は過ぎたのにな」

「事が事だ。もしかしたら追手が来て、捕まってしまったのかもしれない」

「だとしても、宇宙じゃどうしようもない」

「いや、遅れているだけかもしれない。追手を撒くのに時間がかかったとか」



 待った。だが、日が沈んでも空から降りてくるものはなかった。

 それでも何日も待った。しかし現れない。

 やがて、待つ人影もまばらになった頃、またメッセージが届いた。

 そして、その中のある言葉でハッとする。


『お返事をいただきたいのですが……』


 そうだ、こちらはまだ返事をしていなかったではないか。相手は姫君。

こちらが受け入れる前提で押しかけに来るなんて野蛮な事するはずはない。

 それに地球に降りて来たもののメッセージが上手く伝わっていなくて

侵略と勘違いされ攻撃、あるいは捕らえられるのではといった

恐れも抱いているのかもしれない。


 映像の最後に私の従者を紹介しますとまたも露出度の高い美女が後ろにズラリ。

ついでにこの子たちの結婚相手も探したいとの事。

 これは何が何でも地球に来てもらわなければ。

とは言え、返事をするにもどうすればいいのか。

こちらも宇宙に向け、映像を電波にし、飛ばせばいいのか。

 会議会議の日々。良い案が出ないまま頭を悩ませていると

ついに、前のメッセージで示した宇宙船の着陸予定地点に宇宙船が降り立った。

急遽駆け付け歓迎を、と思ったのだが船から降りて来たのは姫君ではない。


「あのー、私これを届けにキマシタ」


 そう言って宇宙人が出したのは返信機らしい。

自動販売機ほどの大きさで、モニターとアンテナ。それにカメラもついているようだ。

 きっと姫君の計らいだろう。この機械で映像の受信と送信ができそうだ。

男たちは宇宙人の手を取り、お礼を述べた。


「いやー、ありがとう! 姫様の従者か何かかな? ぜひ君も地球でのんびりしてくれ」


「いえ、私はこの装置の販売会社の者デス。

料金を……ええ、金や宝石類で構いませんヨ。

それから送信の度に十万リラ掛かりますガ

それもまた金などでお支払いいただけますのデ

定期的に伺いますのデ、では私はこれデ」


 宇宙人はそう言うと宇宙船に乗り、地球から去って行った。

淡白な奴だが商売人とはそんなものなのかもしれない。

そんなことよりもさっそく返信を、と男たちは装置に群がった。

 


 その様子を見ている女性たちは言いようのない不安を胸に抱いていた。

 

 これは……ひょっとしてよくあるアレではないのかと。

 

 しかし、あの夢を見る少年、あるいは性欲に溺れた若者のような表情。

あの男共にやめるよう説得するのは容易い事ではないと腕を組み唸るのだった。

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