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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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クイズ番組

「はい、では次の問題です! プロ野球十二球団のうち――」


「はい! 答えは――」


「正解です! トヨタタカヒロさん、連続でポイントを獲得ぅ!」


「いよぉし!」


「さあ、皆さんも頑張ってくださいねぇ! では次の問題ですっ。

えー、昨年末に発売し、売り切れ続出だった――」


 ああ、駄目だ駄目だ。問題が頭に入ってこない。

他の奴の回答も、まるで駅を通過する快速電車のように何も頭に残らず過ぎ去っていく。

何としても結果を、爪痕を残せと事務所から言われてるのにこんなんじゃ……


「正解! SUBARU TAKUYAさん見事な早押しぃ! さあ、次の問題に移ります」


 ああ、クソ。また先を越された。

ダンサーだか何だか知らんが、まったく知らんぞお前なんか、知らん知らん知らん!


「ロナウド・マクドナルドさん大正解! 画像の粉は味の素のうま味調味料でしたー!

怪しい粉ではありませんよーっと余計でしたね、失礼しました。さあ、口直しに次の問題!」


 また解答を逃した。わかっていたのにクソクソクソッタレの外タレめ。

大人しく国に帰りやがれクソがクソクソ。ああ次こそは……


「はい、正解は伊藤園のお茶でした! お~い、と言いたくなりますねぇ。

しかしメーカーまで当てるなんて、さすがですね伊藤悠馬さん! さあ、続いては」


 クソガキが! お前なんて三流俳優だ! 

照れた振りしてるのはバレてんだよ! 純朴ぶるな!

童顔も三十過ぎたらオッサンだぞ! 引っ込んでろ!


「はーい、アップルみかこちゃん正解です! ビールよく飲むのー?

映像はサッポロビールさんの工場でした! さあどんどんまいりましょう!」


 ブスブスブスブスの女芸人が、知らねえよお前もお前のギャグなんか!

なにがあっぷっぷアップルーだ! つまんねーんだよ! 

売れるかお前なんか! 散れ! 砕け散れ!


「あらアタシが正解? やったわ!」


「はい、キューピー松永さん大正解! 今の問題はポイントが高かったです!

ここに来て追い上げましたねぇ。では最終問題です!」


 クソカマ野郎がぁ。てめえのファッションチェックなんざなんの価値もねぇんだよぉ。

番組冒頭で俺のファッションをけなしやがってよぉ。

どうせカットだろぉ? 長々と喋りやがってドブカスがぁ。

 ……あ? 最終問題!? やば、やばやばやばばばばばば

絶対正解しないと。問題は……コンビニ! 商品当て! いよぉし! わかるぞ!

クソみてーな食生活のお陰だ! うおし! ボタン! よし俺だ! 俺のが点いた! よし!


「はい! お答えをどうぞ!」


「ファ、ファミマのプリンです!」


「……うー、残念! 不正解! お、はい!

次にボタンを押したのが早かったのは吉野家瑠理香さん!」


「これ、セブンのプリンですよね!

わたしぃー、これ子供の頃からこれ大好きなんですよぉー」


「大正解! 答えはセブンイレブンのプリンでしたぁ!

因みに新作です。来週から店頭に並ぶそうです。さあ! 

残念ながら番組終了のお時間になってしまいました!

と、最後に良いお知らせがあります! 番組をご覧の皆さんの中から抽選で

番組スポンサー様から素敵なプレゼントが――」



 終わった。すべて終わった。マネージャーの視線に殺意がこもっている。

まさか……まさか、よりによってこの問題を間違えるなんて……。




 この時代、テレビ業界は変化を求められていた。

ネットの躍進、配信サイトの充実。趣味の多様化。

感染性のウィルスの流行によるロケの制限。芸能人の度重なる不祥事。

様々な逆風に押され、芸能事務所もその煽りを受けた。

 無論、売れっ子は強者として君臨し続けているが問題は仕事がないタレントである。

 クビ。解雇通告。しかし、それにも限界がある。全員クビにしてしまっては残された者

これから入ってくる者はいずれ自分も……と不安に思う。

そんな悪評が広まれば事務所の存在そのものが危うい。


 で、あるならばと頭を捻り、出した案が改名である。

それもプロ野球球団のように名に企業名を入れるのである。

 苦肉の策と思いきや『なんか親しみがある』『ちょっと面白い』と

意外にも視聴者に好評でブームを巻き起こし、今では始まりがどこかもわからぬほどに。

 この、頭を抱えるセブンイレブン隆志もそういったタレントのうちの一人である。

 しかし、一流企業の名前を入れただけで

三流タレントの彼が活躍できるようになるほど芸能界は甘くないのであった。

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