やりがい
「それでこの問題の解き方はこうで……さて、ここまでいいかな?」
――優しく
「……うん、よし、じゃあ、次の問題に移ろうかぁ!
さあ、誰か読み上げてくれるかなぁ!」
――大声で
「……よーし、じゃあ、先生が読むぞ、よく聞いてなさい」
――威圧的に
「はいはーい! じゃあ、わかる人いるかなぁ!?」
――楽し気に
……一切反応なしか。優しい声、大きな声、威圧的な声、楽しそうな声。
どれだけ工夫しても無反応、無駄に終わった。
並ぶ机と椅子。こいつらはただ黙ってそこに座り、俺に視線を向けている。
こんなんじゃ、やる気が削がれるってもんだ。
俺が悪いのか? つまらない? 授業の進め方が早い? それとも遅い?
訊いたところで返ってくる答えはなし。気味が悪い。ゾッとするというのはこの事か。
何が楽しくてこいつらはここにいる。脳みそついているのか?
ああ、虚しい。どうしてこの俺がこんな奴らに……。
馬鹿馬鹿しい。こんなのもうやってられるか……。
「博士、またです! また機能が停止しました!」
「そう大きな声を出さなくても見ればわかる……はぁ。
このロボットはいつも授業を途中で放棄してしまう。一体何が原因なんだ?」
「完璧ですのにね。このテストは小学生相手を想定していますが
大学生、それも名門大学であっても授業できるくらいなのに」
「この分だと人間相手のテストはまだまだ先だな。
ちょっと生意気な子供に激怒し、首を絞めでもしたらすべて終わりだ」
「そうですね。現場はいい子ばかりじゃありませんでしょうしね。
アンケートではやはり『温かみがない』『ロボットなんかに教わるなんて』
って抵抗がある親子もいるようですし」
「また調整し、テストを再開するとしようか……」
「はい、マネキンはどうします? 増やします? それとも減らします?」
「数を変えたところで無意味だろう。気にしちゃいないさ……」




