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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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死後の再会

 私は待っている。ここで待っている。愛する妻がここに来るのを、ただずっと……。

 つらくはない。いずれ必ず来ると、会えると直感しているからだ。

 そして、それは恐らく正しい。どうやら死後の世界では現世で結んだ縁が深い者と、また会えるようになっているらしい。粋な計らいだ。

 そう、私は死んだ。流行り病で、まだまだ働き盛りの時に。そこが申し訳なく思う。妻を一人に……もしかしたら再婚しているかもしれないが、まあ、それも致し方ない。

 だが、どうあっても会いたい。一度でもいいから。

 死ぬ間際、病床で二人、約束したからだ。待っていると。必ず会いに行くと。だからたとえ、思った形といかなくとも……




「あなた……あなた……」


 おお……おおお、これは妻の声。後ろからこっちに近づいてくるようだ。

 そうか、もうそんなに時が経っていたのだな……。ここにいると時間の感覚がなくなる。その理由は絶えずかかっている薄い霧と足元で咲く花。

 ……ああそうだ、この花。妻にあげようと思っていたんだ。ふふふ、痛みなど何もかもから解放され、心が穏やかになりすぎるのも考えものだな。つい、ぼんやりしてしまう。

 さあ、再会の時だ。気を引き締めねば。


「やぁ久しぶ、え……」


「あなた、久しぶりね」


「え、その、あなたは誰、と言うか何だ……?」


「いやぁね、妻の顔忘れちゃった?」


「いや、顔というか、え?」


「ん? ああ、ごめんなさい。モニターに表示するの忘れてたわ。ほら、画面に、あたしの顔が出たでしょう」


「お、おお……?」


「ん? ああ、そうよね。こんなお婆ちゃんになっちゃったから、わからないわよね。ほいっと。ほら、こんなもんかしら?

どう? 好きに調整できるのよ。髪色もピンクにしてみたり、肌の色もふふふっ」


「あ、お、ああ、うん、いや、そもそもこれは何だい? まさかロボット? 君が操作して? え、でもじゃあ君はどこに……」


「ああ、ロボット。まあそんなところね。でも、あたしはちゃんとここにいるわよ」


「ここ?」


「こーこ。脳を移植したの。そのお陰で寿命が二百年くらい伸びたわ」


「お、おお……じゃあ、そんなに待たされたのか……」


「現代では常識よこれ。みんなやってるわ。いやー、あたしも寿命があと僅かって感じだったけど技術が発展してギリセーフ! ラッキーって感じ! あはははは!」


「そ、そうなのか……。ま、まあいいや。それでその、再婚とかは」


「あ、ちょっとまってメッセ入ったわ。あらぁ懐かしいわね。死んだ者同士は連絡取り合えるのね! やっほー! ミコちん、元気? うん今、旦那と話してる、そう昔おっ死ちんだ。そうそう旧人類の」


「旧人類……」


「うんうん、はーいオッケー! 合流して一緒にまたポポンヌクルトやりましょー! あっはぁ! 負けないわよー!」


「ポポンヌ……」


「みんないるのねー! はーいオッケーオッケー! じゃあ後でねーネオバブリー!」


「ネオバブリー……」


「さてと、立ち話も何だし、歩きながら話しましょ……っと、座標からしてミコちんのところまで遠そうね。よーし、飛ぶわ。さ、つかまって!」


「飛べもするのか……」


「ん? 何よ浮かない顔して。ほら抱っこしてあげるから来なさい」


「ああ、うん……でもいいのかい? い、いやぁその余りにもその、私はほら、古い人間だから一緒にいて……」


「なーに言ってるの! みんなに紹介するんだから。あたしの最愛の旦那だってね」


「お、おお……」


「何よ、泣いているの? そう言えばあなたって最期の時も泣いてたわね」


「ははは、そうだったね。でも君だって……いや、飛びながらゆっくりしようか、昔の話は」


「ふふ、そうね。さ、行きましょう! 準備は良いわね!」


「よし……そうそう昔、は、はやああああああぁぁぁぁぁ!」

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