最後の木の葉
「やぁ、おはよう。来たよ」
「……ああ、あなた」
「窓の外を見ていたのかい? 良い天気だものね。
開けようか? まぁ少し肌寒いけど」
「ううん、いいの……私が見ていたのはあの木よ」
「木? ああ、あの外の木かい? でもなんで」
「ええ、ちょっと思ってね。あの木の葉が全て落ちる頃には私の命も……」
「な、何を言っているんだ! ……よし、見てて」
「あ、あなた、どこへ……外? 木に登って何を……え、ガムテープ?
ふふっ、本当に馬鹿なんだから……」
「やぁ、何を見ているんだい?」
「ああ、あなた……。あの病院」
「ああ、あれか。ただの廃病院じゃないのか?」
「いいえ、まだ患者が残っているみたいなの。まあそれももうすぐかもしれないけど」
「……この町も随分寂れたな。どこを見てもくすんだ色をしているよ」
「ええ……。きっとあの病院が閉鎖される頃にはもうこの町も……」
「そうはならないさ、きっと復興するよこの町も、他も……。
そう、我々は強いんだ。さぁ、実験の続きをしよう。
もっとひどくなる前になんとしても植物を蘇らせなくちゃならないんだ。
きっとそれが人類を救う鍵なんだ!」
「あ、あなた……勢いは良いけど実験室のカードキーを落としていったりして
……仕方ないわね。ふふっ、本当に馬鹿なんだから……」
「やぁ、おはよう……また見ていたのかい?」
「ええ、あなた……あの星、もう随分くすんだ色になったわ」
「滅びゆく星を見ても気が滅入るだけだよ。望遠鏡を覗くのはやめたほうがいい」
「ふふふ、いいの。この体じゃ、他の楽しみなんかないんだから。
それにね、なんだかとても共感するの。
きっとあの星から完全に緑が消える頃には私の命も……」
「な、何を言っているんだ! ……よし、見てて」
「あ、あなた、どこへ……うちの宇宙船に乗って何を? まさかあの星へ?
ふふっ、本当に馬鹿なんだから……」




