自然破壊反対!
ある夜中、門を越えその邸宅に人々は押し寄せた。
ざわざわとその話し声に大地主は布団から飛び起き、怒鳴り声を上げた。
それは恐れから来る虚勢半分、腹立たしさ半分であった。
「な、なんだ貴様ら!」
「夜分遅くにすみません。実は我々……抗議に来たんです」
「こ、抗議? 一体何のことだ」
突然のことで面食らった大地主だが、そこはさすが大地主。
着物を整え、冷静に相手を見据えた。
「貴方の山……お売りになるんですよね。
それをやめていただきたく思い、我々一同こうして――」
「ふざけるな! あの山は売る!
なんでも高速道路を通すらしいからな! はははっ大儲けだ!」
言葉を遮り、一方的に怒鳴りつけた大地主。かっかっかと高笑い。
その様子に人々も火がついたように声を荒げた。
「それこそふざけるな! 自然はどうなる!」
「そうよ! そうよ!」
「小鳥の囀り、朝露の音! アンタ耳を傾けたことないだろ!」
「そうだそうだ! 弱者の声を聞け!」
「イノシシも昆虫もみんな生きているんだぞ!」
「道路なんてつまらなーい!」
「あの山で死んでいった者たちはどうなるんだ!」
「だから慰霊碑を立ててやる」
大地主がそう言うとシーンと静まり返った。
そしてまた押し寄せる津波の如く人々が憤怒する。
「ふざけるな! そんなの望んでいないぞ!」
「そうだそうだ!」
「山が、自然を見るのが好きなんだ!」
大地主はその様子にとうとう火山の噴火の如く、怒鳴った。
「お前らこそふざけるな! 勝手に自殺スポットなんかにしやがって!
苦情が俺の方に来るんだぞ! 散れ! 幽霊共! 成仏しろ!」
元々気弱な性格だった幽霊たちはピューッと退散し
部屋は静けさを取り戻したのだった。




