生命、迸る
「あ、あ、これ、あ、やば……」
「あ、いく……」
一つの熱き血潮がぶつかり、またそれを受け入れた一つの生命の揺りかご。
暗き航路に放たれたそれらは兄弟であり友でありライバルでもあった。
一斉にスタートし、目指す場所は思い焦がれる熱き女神。
道のりは危険かつ困難であった。
吸い寄せられ、砕かれ、正しき道を進むのは至難の業。
女神が微笑むのは一摘みの幸運な者。
身を削られ、潰えていく脱落者にかける言葉はない。ただ暗闇に呑まれていく。
彼らは語る。声は発さず、彼らの思念で。
時に嘲り、時に罵り、時に励まし合い、そしてついに
目指していた終着点が見えたのであった。
「……見えたな」
「ああ」
「お前が行けよ」
「何言ってるんだ。競争だろ? 残ったのは俺たちだけ。最後まで競わなくちゃ」
「俺はもう……無理みたいだ」
「おいおい、いいのかよ。じゃあ俺が貰っちまうぞ」
「ああ……」
「ちっ、張り合いのねーやつ。……仕方ねーな。ほらなにしてんだよ。
寄って来いよ。合わせれば行けるだろ」
「お前……」
「へっ、礼は言うなよ。さ、行こうぜ。
ずっと視線をくれてたあの子のもとに。ああ、熱くてまいるぜ」
二つの隕石は合わさり、巨大になった。
これにはまあ問題ないだろうと分析していた宇宙局の者たちも度肝を抜かれた。
巨大隕石が目指す場所。
我らが女神。太陽にどういった影響を及ぼすか。
崩壊せずともその揺らぎは地球にどんな災害をもたらすのか。
計算を始めるも時既に遅し……。




