責任の取り方
とある工場。一人用ソファーに沈むように座る男。ゲップをし、膨らんだ腹を掻き
酒を片手に従業員たちの仕事ぶりをぼんやりと眺めていた。
その太った体同様、怠惰な脳みそで考えるのは金と女とこの現状。
……右向けばロボット。左向いてもロボット。
人型のロボットが使い物になるようになったら、まあこんな世の中になるわな。
人間の労働者はお払い箱。ロボットは疲れもしない文句も言わない。当然の結果だ。
追い出されるような人間からすれば文句の一つ、いや文句しかないだろうが
俺のような経営者からすればロボット様様だ!
全員クビクビ。やんややんや言ってたが奴らがどうなろうが知るものか。
最初は俺自らが仕事を教えてやる必要があったが学習能力が高く
今ではこうして仕事を任せ、ははははっ!
だらけ放題、なんて優雅な! これが勝ち組、貴族階級……あ。
「急病ね……それで、ロボットたちに聞いた結果どうだったんだ?
工場内の監視カメラの映像によると、応急措置を怠ったとか」
「はい、なんでも『救護に当たって死なせた場合、自分の責任になるのが嫌』だとかで
中々近寄ろうとしなかったようです……」
「ふん? まったく妙なところまで人間に似たのか……ん、おい、今の角、右だぞ」
「あれ? 本当だ。おかしいな」
「それに、速い……か? いや、速い。速いぞ! 速すぎる! おい、おい! 止まれ!」
『車体の異常を検知したのでここで自動運転を終了します』




