あなたに委ねます
とある場所。いつも行く場所。あるいは行かなければならない場所。
そこにとてもとても嫌な人がいました。
その人はあなたにすごく嫌なことをしてきます。
それもいつもの事です。
でもいつもと違うことが。
なんと恐ろしい怪物が現れました。
ええ、とても怖いです。体が震え、血の気が引くほどに。
嫌な人はあなたに目もくれず、さっさと逃げ
一人取り残されたあなたに怪物が迫ります。
と、そこに魅力的な異性が現れました。
あなたの手を引き、連れ出します。
丁度いい身長。それにとても良い匂いです。
何とか怪物から逃れた二人はポツポツと話始めました。
趣味が合い、すぐに意気投合。
相手があなたに惚れたことがその何気なく触れ合う肌から伝わるようでした。
と、そこに嫌な人が現れ、二人の良い雰囲気をぶち壊しにします。
が、怪物もそこに現れ、嫌な人を惨たらしく殺しました。
それはとてもとても目を背けたくなるような殺し方で
でもジワジワと、とても苦しみながら死んでいきました。
そして、あなたとその魅力的な異性の二人は思いもよらぬ方法で怪物をやっつけ
二人はそのまま付き合い始めることになったのです。
おしまい。
……え? 何なのって? 何が何やら? 薄い? 描写?
どれもこれもどんなのか全然わからない?
全て、あなたの想像力に委ねます。
【魅力的な異性】と【嫌な人】あなたのは身近な人に
【怪物】はそのままあなたが恐ろしく思う姿に置き換え
惨たらしい殺し方というのもあなたの思うままに……。
どうです? 名作に……駄目? やっぱり?
それにしたって薄っぺらい? ですよね……。
じゃあ【嫌な人】と言うのはまず……
いや、足さなくてもこれが一番想像しやすいでしょうか?
嫌な人だらけですから。
他のほうが想像し辛いですよね。
嫌な人を殺してくれる怪物も都合のいい異性も現実にはそうそういないのですから。
そして嫌な人も誰かにとっては良い人であったり
あなたも誰かにとっては嫌な人であったり
そして、怪物であったり……。
怪物はその鋭い牙で足を刺し、突き飛ばして奴が倒れたところを
もう片方の足も三度刺した。
起き上がろうと体をこちらに向けた奴。その最初に刺したほうの足も何度か刺した。
奴は悲鳴を上げ手を伸ばし、それを阻止しようとするが届かない。
腹に力を入れ、起き上がろうとしたところを、その腹を刺してやった。
すると奴は再び、頭を床に着けた。
その顔に影が覆い被さると、奴はやめて、やめて、と泣きじゃくりながら
顔の前に手を掲げた。
右右縦左右右縦左右右と、包丁を振り、それを何度も切りつけてやると
指が曲がり、角度が下がり、奴は手の甲を額に付けたまま上げようとはしなくなった。
腕と肩を刺すたびに上げる大きな悲鳴も、徐々に小さくなり
奴は死んだ虫のように縮こまった。
すすり泣き、その血に塗れた手で顔を覆うのは私を見たくないからか
涙と鼻水塗れの情けない顔を見せたくないからか。
何にせよ馬乗りになり、手を払いのけると奴の見開かれた目と私の目が合った。
すると奴は私の意図に気づいたのか顔を振り始めた。
何か言っているがもはや何かは分からない。
耳が遠い。私は泣いた後のように少し頭がボッーとしている。
奴の髪を掴み固定する。
奴は指を動かすがイソギンチャクのようだ。力が入っておらず邪魔にはならない。
また悲鳴を上げだしたので静かになるまで顔を包丁の柄で殴りつけてやった。
ここだけは注意深く、包丁を差し込み、奴の片目だけを抉り出す。
うまくできたが結局は指でやった方が早かった。
涙と血が絡み合いながら奴の目玉からポタポタと垂れる。
まるで皮を剥いたブドウだ。
ゴミのように遠くへ投げつけると、奴はそれを一瞬、残った目で追った。
そして視線を戻し、また怯えた。
腫らした口が何か言っている。多分『もうやめて』だ。
ああ、残った目には服を破り、腹を切り開いて取り出した奴の臓物を見せつけてやろう。
また悲鳴だ。また。うるさい。だがもう無視しよう。
奴の腹の中は鰻のようにぬめりがあり、そして温かかった。
気温次第では湯気が出ていただろう。
鋸で削いだ耳や指を奴の胸の辺りに乗せてやると
どこか皿の盛り付けのようで、凝りたくなった。
だが奴は勘違いしたのか『虫? 虫?』と嗄れた喉で鳴き
不快に思い落とそうとしたのか体を揺らした。
それから生ハムのように皮膚を切り取り、さらにその上に積み上げてやった。
切るだけじゃだめだ、脛を膝を骨を、鉄で叩いて体中凹ませてやろう。
青、紫、黄色、赤、痣がランダムに浮かび上がる。楽しい楽しい楽しい。
歯を抜いた後、その穴深くまで串でもなんでも尖ったものを刺してやる。
頭が、毛穴が熱い、髪の毛がちりつくようだ。
自分の頭を掻いたつもりが奴の頭をガリガリと掻いていて思わず笑ってしまった。
すると奴はまた怯え、悲鳴と涙と鼻水を垂れ流した。まるで車の防犯ブザーだ。
次いで、私は馬乗りになった奴の体から血とは違う湿り気を感じ取った。
ああ、そうだ。それで気づいた。そこだ、そこを忘れるところだった。
でもいい。性器は最後の最後。これが奴の最後の希望。
さすがにここには手を出さないだろう、と。
そんなはずがない。
切り取ったものを鼻の前に持っていき嗅がせた後
鼻柱を切り、広げた穴に全部全部ぶち込んで
股裂き、皮剥ぎ、鋸挽き、焼いて、熱湯を飲ませ
虫の息ひくつくだけの奴それでもまだ生かして自分の体が腐っていく様を……っと
まだまだ描写が足らず物足りず時間も足りず、稚拙稚拙。
あなたは誰を想像しましたか? 一瞬でも。
後はお願いします。足してください。あなたの嫌な人で。
サイレンの音。ああ、怪物がここに来る……。




