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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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ヘンゼルとグレーテルに憧れて……

 ある家に貧しい夫婦とその子供である二人の兄妹が暮らしていました。

 ある晩。お母さんと父が話し合っているのを耳にした二人。

その内容はとても悲しく、信じたくないものでした。


『私たち、いらない子なの?』


 と、布団の中で声を殺し泣き始めた妹をお兄ちゃんは必死になだめます。


「大丈夫、兄ちゃんが何とかしてやるから……」



 翌日。兄妹はいつものように家を出ました。

 お兄ちゃんは道中、袋からポツポツと気づかれないように中身を落としていき

兄妹はその日も、その次の日も無事に家に帰り、平穏に過ごしました。

 しかし、ある日の事。


「アンタね! 毎日うちの庭の植木のところにゴミを捨てていくのは!

何なのよ! 蟻が集って気持ち悪いのよ!」


 お兄ちゃんはガシッと腕を掴まれてしまいました。

そして、その腕に持つビニール袋をひったくったオバサンは中を見て顔をしかめました。


「何これ? 肉? ……い、いやあああぁぁ!」


 袋の中にあったのは人間の指先。

そう、汚れ、黒々としたビニール袋の中には肉片が入っていたのです。

それはあの晩。

『保険金もかけたし鬱陶しいからそろそろ上手いこと殺そう』

と話し合っていた二人の実の母親と継父。

 お兄ちゃんは身に迫る危機を知り、夜中、眠りについた二人を殺し

そして肉を切り、少しずつ気づかれないように学校に行くときなど

家を出る度に排水溝や茂みなどに捨てていたのです。

小さくしたから見つからない、蟻や鳥などが食べるから

上手く行くと考えてのことでした。


 事が明らかになり警察に保護された二人の胸中は

暗い森の中彷徨い、お菓子の家を見つけたようにどこかホッとした気持ち。


 ポケットの中もその手にも魔女のお宝はありませんが

二人の手はお互い握りしめたまま離さないのでした。

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