痛ましい声
エリ……エリ……お願い……助けて。
「ミサト……?」
エリは瞼を擦り、起き上がった。先程聴いた、痛ましい親友の声。
辺りを見渡し今、自分が眠っていたのだと理解すると溜息をついた。
夢。ただの夢。
それでも虫の知らせということもある。
特に最近、ミサトの様子がおかしかった。
だからエリは一応電話をかけてみることにした。だが……
……つながらない。まさか、本当に?
不安を抱きつつ身支度を整え大学に行き
他の友達に聞いてみるも見かけていないという。
不安は膨らむ一方だが仮に警察に相談したとしても
たった一日連絡が取れないというだけでは、そう早く対応してくれると思えない。
親友が何らかの事件に巻き込まれた。その根拠が夢ならば尚更だ。
どうするこもできないことを歯痒く
また、きっと大丈夫。ただの偶然、と楽観的に思いながらも日は落ち
エリは眠りについた。
そうすることが手掛かりを得る早道かもしれないと自分に言い訳しながら。
エリ……お願い。早く助けて。
またあのか細い声。エリが目を覚ました時にはもう朝だった。
ろくに手掛かりを得られなかった。
しかし、やはりあの夢はただの夢ではない。ミサトに何かあったのだと確信を得た。
そして、ミサトはまだ生きている。
エリはそう自分に言い聞かせ、必ず助け出すと心に誓った。
それから毎晩、エリはその声を聴いた。
エリ……助けて。
エリ……ここから出してよ……。
エリ……お願い……。
エリ……どうして助けてくれないの……。
エリ……エリ……早く……出して。
しかし、いくらこちらが呼び掛けても居場所などは教えてくれない。一方通行だ。
親友の痛ましい声とどうすることもできない申し訳なさ
そして進展しないことで苛立ちが募り
それが原因か否かその声はとうとう起きている時にも聴こえるようになった。
頭痛がし、エリの目の下には隈ができていた。
ねぇ、エリ……早く出してよ……お願い。
「だから、どこにいるのって聞いているのよ!」
エリは叫んだ。人目も憚らず、駆け寄る友達の手を振り払い
空に向かって大声で。
「どこよ! どこにいるの! 言いなさいよ! ミサトおおおぉぉ!」
ここよ……ここにいるってば……。
「どこぉ! もうあああああああああぁぁぁ!」
ねぇ、早く出して……早く頭を割ってよ……。




