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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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「ゴホッ! ゴホン!」


 まただ……またかよクソ……。

 男は隣の部屋から聞こえるその咳に舌打ちした。


 古いアパート。壁が薄いのは仕方がないが、隣の部屋の老人。

ちょうど男がウトウトし始めたときに咳をしだす。

 顔を合わせ時にそれとなく指摘したが

逆に男の部屋のテレビの音がうるさいと怒鳴られた。


「ウオッホン! ゲホッ! ゲホゲホ! ゲフンゲフン!」


 うるさい……。

 男は布団を頭からかぶり、壁に背を向ける。


「ウオッホン! エフッ! ゴフッ! ウオエ!」


「……うるせえ。うるせーぞ!」


 男はとうとう壁に向かって怒鳴った。


「ガホッ! グハポォ! ウェエエオホッホン! ゴパァ!」


 ……いや、どうも様子がおかしい。

 喉に何か詰まった? 持病?

 高齢のようだし、まさか死ぬのでは?


「ンンンンガホッ! ガホッ! ギフゥ!」


 ……まあ、それならそれでいいか。

死ぬなら死んでくれ。せいせいする。


「グフッ! ゲフッ! ゴハッ! ゴハアアアアアアアン!」


 いや、個性的すぎて気にはなるが……。

まあ生きてたら、大丈夫ですかとでも明日、声をかけてやるか……。


 男は目を閉じ、イヤホンを耳につけ、睡魔と抱き合った。



 老人は死んだ。

 男も死んだ。

 アパートの火事から逃げ遅れて。

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