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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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矯正器具

「ようこそ、お集まりの皆さん!

さ、長々とした挨拶は省き、さっそくこちらの映像を見てもらいましょう」



『……僕は感情が薄いんです。ああ、無いといっていいかもしれません。

お笑い番組。悲しいドキュメンタリー。人気の映画。何も感じない……。

人の話も同じです。何一つ心を動かされることがない。

人が褒め称える、どんないい作品であってもです。

そんな僕から友人も、恋人もみんな、離れていくんです。

まあ、それ自体何も感じないんですけど……』



「ふむ、つまりこの映像の青年はそれでこの研究所に相談にやってきたわけか」

「何も感じないのに悩み相談?」

「馬鹿馬鹿しい。カッコつけて自分に酔いしれているだけなのではないか?」

「いや、世の中には表情に乏しい奴がいるし

感受性が低い奴もいる。彼もそうなのだろう。

やはり、笑ったり泣いたりしたほうが人生は楽しい。だから悩む気持ちもわかる」


「そう、調べたところ意外にもそういった人間はいるようで

私は世のため人のため、彼を治療することに決めたのです!

そしてそして、このカーテンの向こう。察しのいい方はもうお分かりですよね?

ガラスで区切られた部屋には矯正が完了した青年が皆さんを待っています!

はい! ではカーテンオープン!」


「おお!」

「笑顔、それも満面の笑みじゃないか!」

「うむ、気持ちのいい笑顔だ」

「しかし、一体どうやって? やはり大したことはなかったのか?」


「はい、ええ。気になりますよね! そこでご紹介しましょう!

こちらにあるのが私の発明品!

彼にはこの器具をつけて様々な映像を見てもらいました。

動物の出産。人間の死。面白映像。

これまで強く感情を揺り動かすことがなかった彼に

器具から発せられる電気で――」


「ちょっと待ちたまえ。電気? 流したのか?」


「ええ。この傘の骨のようなアームを顔に取り付け、電気を流し

笑顔、怒った顔、泣き顔などを強制的に作らせ、記憶させるというわけです!」


「おいおい、そんな非人道的な……」


「何をおっしゃいますか! 確かに電気を流すというと

聞こえがあまりよくないかもしれませんが見て御覧なさい。

彼の顔に火傷の痕などないでしょう?

そしてあの笑み。満足している証拠ですよ。

さ、それでは資金提供のご相談を……」


「待て、何か言っているようだぞ」

「ああ、唇が少し動いている。なぜはっきり言わないんだ?」

「ガラスが厚くて聞こえないな」

「耳をつけてみよう」



「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

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