表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

429/705

信じる力

 ……え、嘘、これって……夢?


 目を開けた少女がそう思ったのは無理もない。

 そこは空。

ビルを見下ろし、走る車も指でつまめるような大きさ。


 夢……それとも幽体離脱?


 寝起きのようにぼやけた状態から徐々にはっきりしてきた脳が

これは夢ではなく現実なのだと告げていることを少女は感じた。

 少女は辺りをキョロキョロ見回す。

 探し物はすぐに見つかった。自分が入院している病院。

少女は両手を左右にピンと伸ばし、滑空する飛行機のような体勢になったが

スッと両手を下ろした。


 ……体に戻るのは後でもいいよね? だってこんなに自由なんだもの。

このまま体に戻れなくてこの夜空に、まさに天に昇ってしまっても別に構わないわ。

これまでずっと願ってたんだから。

病気の体はいらない、自由に空を飛びたいって……。


 そう考えた少女は空を飛び回り、明かりが灯る街に近づいた。

 美しかった。これまでは病室の窓から眺めるだけであったが

今では楽しそうな人の声まで聞こえる。

 少女は引き寄せられるように更に近づく。


 すると徐々に賑やかさが騒がしさに。そして


「何だあれは!」

「人が、女の子が空に!」

「どうなっているの!」

「超能力!?」


 ……え?

幽体離脱じゃなくて私、本当に飛んでいるの? そんな馬鹿なことあるわけ――


 少女がそう思った瞬間、まるで魔法が解けたかのように

体の節々に痛みが戻ってきた。

そして勢いを無くした紙飛行機のように落下する中

ある時、看護師の女が口にした言葉が少女の頭の中に蘇った。


『大事なのは治るって信じること。治った自分を想像するの。

思い込みの力って実は馬鹿にできないのよ?』


 だが、迫るアスファルトを前に少女は長年連れ添った

そしてこれから味わうであろう痛みしか想像することができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ