宗教の入り口
――ブン!
――ブン!
「うおっと」
「ああ、悪い!」
「いや、いいんだ。こっちが近づいたんだし。素振り中か」
「ああ、練習しないと本番にいいのが出せないからな」
「そうだな……なぁ最近お前、調子いいみたいだな」
「へへ、だろ? この前なんかドーン! と一発おみまいしてやったよ」
「ああ、見てたよ。あれはいい振りだった。どデカいのを一発なぁ……」
「ふふん、ん? 何か言いたそうだな」
「……ああ。何した!? どうしたらお前みたいになれる? 頼む教えてくれ!
このままだと俺、戦力外って言われちまうよ!」
「おおう、すごい勢いで。相当悩んでいたんだな。
ふー、しょうがないな。これだよこれ」
「ん? これ、ただの石コロだよな」
「おいおい! 失礼なこと言うなよ。
こいつには特別なパワーが秘められてるんだ!
これを持ってからというもの調子がいい。ああ、投げた時もいい感じだよ」
「おいおい、俺を騙しているんじゃないか?」
「へっ! まあ信じないならいいさ!
どの道これは俺のだからくれてやるわけじゃないんだ。
お前もその気があるなら自分に合ったのを探すと良い」
「あー悪かったって。しかし、石かあ……」
「おいっす、何話しているの?」
「ああ、ちょっとな……ってお前、その石」
「ああ、これな、へへ。俺も真似してみたんだ。毎晩磨いてもいるんだぜ」
「へー磨くのか、俺は持っているだけだったな」
「おっと話に混ぜてもらうぜ。俺は磨いているだけじゃない。
台座を作って家にいる間はそこに置いているんだ」
「おいおい、結構持っている奴いるんだな。俺も持とうかな……」
「まー俺のが一番だがな」
「いいや、俺のだから」
「おいおい、そもそも最初は俺だから俺のが一番だ」
原始人たちは言い合いを始めた。自分の石が一番だと。
やがて、よりご利益にあずかろうと競うように大切にしだし、そして崇めるように。
それはまるでそう、神のように……。




