巻き戻し
ある晩、三人の男がテレビを食い入るように見つめていた。
「どうだ?」
「あ!」
「いたか!?」
「今のところ戻して!」
「この辺か? どうだ」
「……あ、気のせいだったわ」
「おいー!」
笑い合う三人が見ているのは呪いのビデオ。
はなから信じていなかった。酒の肴。ツッコミを入れつつ楽しんでいたのだ。
「にしても、この母親ブスだなぁ」
「はははっ、子供はどっちにも似てないな不倫か?」
「役者だろ。邦画にありがちな雰囲気の暗い食卓だしな」
「そもそも、なんでカメラ回しているんだって話だよな。
お前らの食事風景なんざ誰も興味ねぇよ」
「あ、おい! 今のところ!」
「なんだ、戻すぞ!」
「……ほら、母親のブラが見えそうに」
「ふざけんなよ! ブス専か!」
「はははははっ……おい! 今のところ戻せ」
「ああ? この辺りか?」
「リモコンかせ!」
「お、おい、まさか本当に……」
「ほーら、醤油を……とれなーい!
とろうとするけど……残念とれなーい!」
「くだらねぇ!」
三人はまた笑った。
だが
「いい加減にしろよ」
三人の笑いがピタリと止まった。
画面に映る一家が数秒、三人を見つめ
その後何事もなかったかのようにまた食器の音だけがカチャカチャ部屋に響いた。




