コックリさん
机を囲むように座る三人の少女。
その中心を見つめてはお互いの顔を見合い、微笑む。
「なんだかドキドキするね!」
「じゃあ、やめる?」
「冗談でしょ。せっかく準備したのに。さ、二人とも十円玉の上に指を乗っけて」
「途中で手を放しちゃ駄目なんだよね?」
「そうらしいよ、帰ってくれなくなるって書いてあった」
「そして取り憑かれて他の二人を……キャアアアア!」
「キャアー! ハハハ!」
「アハハハー!」
「ふふふ、よーし、じゃあやるよ!せーのっ」
「コックリさん、コックリさん、おいでください」
三人は声を揃えてそう言った。
すると、まるでこの場にもう一人増えたような
そんな空気の重み、圧迫感のようなものがした。
でも顔を見合わせるだけで誰もそれを口にしようとはしなかった。
「……コックリさん、コックリさん。
いらっしゃいましたら『はい』へ進んでください」
三人の人差し指で押さえられていた十円玉がピクッと動いた後
紙に書かれた『はい』の方向へと移動した。
「……・今、誰か動かした?」
「ねぇ、アンタでしょ」
「違うわよ、いいから質問しましょう。コックリさん、コックリさん。
この子の好きな男の子は同じクラスの人ですか?」
「ちょっと!」
「『はい』だって! えー! やっぱりあの子?」
「もう!」
「あはは、いいじゃん、バレバレだし、次はどうする?」
「じゃあ、あれにしようよ。最近話題の」
「ああ、あれね。じゃあ今度は私が聞くね。コックリさん、コックリさん。
ブラスティマジロア社の宇宙船、クルヴィバンス号のワープ航法に失敗して
乗員が船内の観葉植物と混ざっちゃった事件なんですけど
あの原因って何なんですか?」
『は』『?』
「は? だって。やっぱ恋愛系がいいんじゃない?
コックリさん、コックリさん。ドマンツクステア星のコーコルトゥルルルルクルケ王子と
マーポーロ星のマーコロクオーノ王女の結婚についてなんですけど
反対の意見が多いんですけど、結局、二人は結婚すると思いますか?」
『ド』『マ』『ン』『え』『?』『な』『に』『?』
「んー? 何か調子悪いのかな? コックリさーん!」
「と言うかこの遊び、参加者の潜在意識で動かしているって説もあるみたいよ」
「いや、それなら何か答えられるでしょ。
それに霊的な存在はポリギノース博士って人が証明したって
教科書に書いてあるじゃない」
「でもこの遊びそれよりもずっと前のよ」
「久々すぎてついてこれてないのかな」
「十円玉って言うのも手に入れるのに苦労したものね」
「やっぱ五千年前の遊びは駄目ね。
片付けて『ポポクルクスタニアンさん』に聞いてみましょう」
十円玉ごとクシャクシャに丸められた紙はゴミとして宇宙船の外へと捨てられた。




