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初恋は鉄の香り
嗚呼、君よ。
初めて君を目にしたその時から、僕は君の虜になった。
もし話しかけることができたのなら
膿んだように膨れ上がった僕の心も少し楽になっただろう。
でも叶わなかった。
幼すぎる僕は門前払い。
だから僕は自分を磨いた。
胸を張って君に会うために。
ようやくその時が来て、僕は君に会いに行った。
でも君はそこにいなかった。
気づけば僕もあの日の僕ではなかった。
手から落ちた鎖が音を立てた。
奴隷市場で今日も鴉が笑う。
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