おお、白雪姫よ……
あれ、シンくん? 起きていたんだね。
え? ああ、夢の途中で目が覚めちゃったのか。物音? さあ知らないなぁ。
さあ、もう一度おやすみ……え?
お話が聞きたい? もー、しょうがないねぇ。
えーっと本の場所は……ああ、ここか。
ごめんごめん、普段はママが読むからさ、パパわかんなくって。
でもパパだって昔はシンくんに読んだんだよ?
ずーっと小さかった頃ね。
ふふふ、まあ今もシンくんは小さいけどってごめんごめん。
ふふっ、あの頃は可愛くてね、幸せだって、うんうん今も可愛いよ。
それで何がいいかな。
これは? 違う? 気分じゃない? ああ、これがいいんだね。
よし、じゃあ、んんん! んん! ん! ゲホッ! ゴホッ! オエッ!
ごめんね、痰がちょっとね。
よーし、読むぞー!
え? うるさい? ふふははは! ごめんごめん。楽しくなってきちゃってね。
じゃあ、いくよ。
むかしむかし、とある国の王様とお妃様は、子供が欲しくて毎日神様にお祈りしていました。
すると、優しい神様が二人の願いを叶え、可愛い女の赤ちゃんを授かりました。
雪のような真っ白い肌をしていたので、その子は白雪姫と名付けられました。
え? ママみたい? ああ。ママ、肌が白いもんね。
幸せな日々。でもそう長くは続きませんでした。
お妃様がご病気でお亡くなりになってしまったのです。
新しく迎え入れられたお妃様の好きなものは自分の美しさ。
毎晩、自分のお部屋で魔法の鏡に向かって訊ねます。
ふふふっ、これこそママじゃない? だってほらママ、鏡好きでしょ?
え? ママはもう白雪姫で決定? わかったわかった。
鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰か教えてちょうだい。
世界で一番美しいのは、ドゥルルルルルル、バン!
お妃様! あなたでございます!
へへ、演出入れてみたよ。うるさい? へへ、ごめんごめん。
お妃様は魔法の鏡の答えに満足していました。
しかし、数年後。変化が訪れます。
世界で一番美しいのは……白雪姫様でございまーす。
なんと、魔法の鏡の答えが変わってしまったのでーす。
お妃様は怒り狂い、家来に白雪姫を亡き者にするよう命令しました。
しかし、白雪姫を馬に乗せ、森の奥で殺そうとしたその家来は白雪姫の……
白雪姫のその可愛さにためらい、そのまま置いて帰ってしまいました。
暗い森の中を心細いまま歩き続ける白雪姫。やがて遠くに小さく家が見えました。
その家、なんと近づいてみても白雪姫が屈まなければ入れないほど、ちっちゃな家でした。
疲れていた白雪姫は……ベッドに、ベッドに横たわると……
いつの間にか、スヤスヤと眠ってしまいました。
しばらくして、その家に帰ってきた七人……七人の小人たちはびっくり!
ベッドに……白雪姫が眠っているではありませんか。
小人たちが白雪姫に訊ねます。
君は一体どこの誰?
白雪姫は勝手に入ったことを謝り、これまでの話をしました。
小人たちは同情し、一緒に……暮らすことにしました。
しかし、白雪姫が死んだと思っているお妃様は上機嫌で鏡に訊ねます。
でも返ってきた答えは……。
世界一美しいのは、やはり、白雪姫様でございまーす。
森の中で七人の小人たちと暮らしていまーす。
お妃様は白雪姫が生きていると知り、怒りに震え!
毒を塗ったリンゴを作ると! おばあさんに変装し! 白雪姫のもとに行きました!
小人の家のドアを叩き、少し休ませて欲しいと頼むと
白雪姫が軽率にも笑顔で出迎えました。
休ませてくれたお礼にとリンゴを差し出すと
馬鹿で頭の軽い白雪姫はリンゴを一口カプリ。すぐにバタリと倒れてしまいました。
それを見たおばあさんに化けたお妃様は喜んで城へ帰っていきました。
仕事を終え、家に帰ってきた小人どもは、とてもびっくりしました。
七人がいくら呼びかけても、白雪姫は目を閉じたままピクリとも動きません。
小人の野郎どもはとても悲しみました。
ガラスの棺に白雪姫を入れ、白いお花をたくさん敷き詰めました。
それを森の中の一番綺麗な場所に置くと、涙を流しつつ小人どもは去っていきました。
ある日、森の中を彷徨っていた王子が……え? パパだって?
ははは、王子か! 照れちゃうなぁ。
えーと、その王子が白雪姫を見つけました。
なんて美しいんだ。王子はそう呟きました。
王子の言うとおり、白雪姫の肌も唇も美しいまま。まるで眠っているようでした。
王子は……我慢できなくなり、ガラスの棺の蓋をどかしました。
そして……その首を、首を手で……ああ、白雪姫の、その、唇に、キスを、しました。
するとなんと、白雪姫が目を覚ましたではありませんか。
そこに居合わせた小人の奴らもびっくり、そして喜びました。
王子様は白雪姫と結婚し
いつまでも、いつまでも、仲良く幸せに暮らしましたとさ。おしまい。
……でもね、シンくん。パパはね、思うんだけどね。
いつまでも幸せな結婚ってあるのかなって。
結婚した後もね、森で助けてくれた恩人だからとか何とか言って
小人のクソどものもとへね、訪ねて行ってね。うん行くだろうね。
そう、そもそもね。小人どもがそんなに可愛い白雪姫に手を出さなかったのかなって。
頭の軽い女ってね、股もゆるいんだ。きっとね、毎晩、かわりばんこにね。
そう、せっくすううううぅぅ! せっくすおねえええええぇぇぇ!
SNSで出会った奴!
高校の同級生!
合コンで知り合った奴!
クソみてぇなバンドマン!
俺より不細工なオタク野郎!
バイト先の先輩!
バイト先に来た客!
そいつらあああとおおおぉぉぉ! ママはなああぁぁぁ!
ぱぱとぉぉぉけっこんしたあともおおおぉぉぉいつまでもおおおおおぉぉぉ!
ああああああぁぁぁぁ!
……そうだよシンくん、もうおやすみ。
ママももう起きない。パパもすぐに眠るからね……。




