廃病院
郊外にある、廃病院にやってきた。
理由は好奇心。度胸試し。
話のタネ探し。暇つぶし。
宝探し。経験を得たい。
と言ったところか。
中はかなり荒らされていた。
恐らく、高価な物はとっくの昔に持ち出された後だろう。
他にも度胸試しに来たグループでもいたのか
そこらじゅうにチーム名のような落書きがされていた。
そこそこ歩いたがこれといった発見はない。
もう十分かな。そろそろ帰ろう。
俺がそうボソッと呟いた時だった。
「一人足りなくね?」
その声に俺は辺りを見回した。
「確かに、一人足りないね」
「どこにいるんだ」
「近くにいるんじゃないか」
「困ったな」
「おーい! どこだー!」
病院の中で反響する声。
上から下から、あるいは横から生えてきているようであったが
いずれの呼びかけにも返事はなかった。
「探そう」
「手分けするか」
「ああ、そうしよう」
「おーい!」
「隠れるなよー!」
一人足りない。
その事に恐ろしくなった俺はひとり、その場から離れた。
素早く、でも静かに進む。
記憶の中の順路を辿り、出口まであともう少し。
外の景色を想像し、少し安堵しつつ角を曲がったときだった。
突然、後ろから手首を掴まれた。
「見つけた。一人足りなかったんだ」
俺は悲鳴を上げ、その手を振りほどき病院を出た。
そのまましばらく走り、ちらと後ろを振り返ったが
誰も追っては来てなかった。
手首をつかんだあの冷たい感触を思い出し、肌が粟立ち
もう一人で廃墟に入るのはやめようと思った。




