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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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404/705

送りつけられたもの

 ある日、街中でまるで拳でテーブルを叩いたような振動がした。

 通行人たちが地震だろうかと反射的に上を見上げ

ガラスが割れ頭の上に落ちてきやしないかと警戒していたところ

ふと気づけば何やら物々しい、宇宙船のような物が道路の真ん中にあるではないか。


「あれが空から降って来たのか?」

「いや、地面にはヒビがないぞ」

「突然現れたのよ!」


 そうざわめく人々の前で、ウィーンという音と共にハッチのようなものが開き

そこからゴロゴロとカプセルのようなものを次々吐き出した。

 そして転がるカプセル、その最後が動きを止めたとき

その宇宙船のようなものはフッと姿を消した。

 一体なんだったのだ。

 そしてあのプロパンガスボンベほどの大きさのカプセルのようなものは何なのだ。

警戒する人々が遠巻きに眺めていると

そのうち、マスコミを始め、政府の役人やら研究者やらが到着し

カプセルを回収していった。

 謎の解明をせかされる中、研究所では日夜分析が進められた。



「で、どうなんだ? わかったと聞いて飛んできたぞ」


「はい、中身は……どうやら廃棄物のようです」


「廃棄物? つまりはゴミか? これだけ騒がせておいて?」


「ええ、印刷されている絵から見るにそうかと。

そして……側面に印字してある日付からして、これは未来の廃棄物ではないかと」


「と、すると何か? 街中に突然現れたあれはタイムマシンというわけか?」


「はい、街中の防犯カメラ等の映像を確認する限りはそうとしか……。

それに、このカプセルに使われている技術もやはり未来なら納得といったところです」


「そうか……まあそこは飲む込むとしよう。だが、なぜ未来からゴミが送られてきた?」


「そこまでは何とも……」


「まあ、いい。活用できないようなら処分するまでだ。

ま、入れ物は貰うがな。使い道があるんだろう?」


「はい、ですが、この物質はかなり危険なようでして開けることはおろか

その処分の方法も……。

何せ、わざわざ未来から送ってきたぐらいですから

彼らにもそう簡単に処分できるものではないのでしょう」


「はぁ……現代で言う核廃棄物のようなものか。

火山の火口にでも放り込んだらどうだ?」


「いやいやいや、そう簡単にはいきませんよ。結局中身が何なのかはわかりませんし

噴火、もしくは有毒ガスを誘発する恐れが」


「まったく、なんて物よこしたんだ! それでこっちに重大な被害が出たら

未来の奴だって困るじゃないか! 結局は自分に返ってくるわけだからな!」


「いえ、わざわざ送ってきたくらいですから、計算しているのでしょう。

恐らく、パラレルワールドのように、分岐してそれで――」


「講釈はいい! それより処分方法を――」


「失礼します! 所長! カプセルの一部分が外れ、そこにこれが……」


「これは……メッセージのようですね」


「なんて書いてあるんだ?」


「『貴方たちの責任です』と」


 大臣の真っ赤になっていく顔を目にしながら

研究所所長はまた他の研究員が自分を呼ぶ声を耳にした。

 そして、その声の調子からして恐らく同じようなものが

また未来から送られてきたのだろうと予想した。


 結局。送られてきたカプセルは厳重に保管された。

いつの日かタイムマシンが完成し

過去に送りつけることができるようになるその時まで……。

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