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神は見ている
神などいない。
そう呟く人間を神は雲の上から見下ろしていた。
神はいる。地上の全てを見てきた。
生命が誕生し、陸に上がるのを。
地上を支配する巨大な生き物、その終わりを。
人が人と呼ばれるようになるのを。
建国と滅亡を。
戦争を。
発展を。
海を、空を駆けるのを。
大災害を。
また戦争を。
そして神は見上げた。
宇宙へ行く、そのロケットを。
人類は長きにわたる失敗の繰り返しからようやく学び
皆、手を取り合い他の星へ移住するのだ。
神は穏やかな表情をしていた。
それは子の成長を喜ぶ親のように、満足そうで、誇らしげであった。
と、そこで神は目を覚ました。
頭を掻きながら辺りを見回し、目を見開くとバッと雲の下を見つめた。
そこには海しかなかった。
ああ、そうだ。色々作る前にまず一眠りしようと思ったのだ。
しかし、どうしようか。
もう夢で全てを見てしまったから何の面白みもない……。




