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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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世界最高のロボットじゃよ

「博士! 博士! とうとう完成したって本当ですか!?」


「おお、助手よ。フフフッ、自宅からこの研究所まで走ってきたのか?

そう慌てなくても逃げはしないと言うのに」


「はぁはぁ、だって、ついに完成したって! 世界最高のロボットが!」


「うむ! 完成したとも」


「それで、どこに? もったいぶらずに見せてくださいよ!」


「ここじゃよ」


 博士はそういうと両腕を広げて見せた。

助手は少しの間の後、ああ、と手をポンと叩き言った。


「なるほど、流石ですね! 透明なロボットですか!

光学迷彩。うんうん、実に素晴らしいです! ゲリラ戦など使えそうですねぇ」


「違う違う。ここじゃよここ」


「・・・・・・ポケット? ああ! 虫サイズのロボットですか!

その中に入っているんですね? いやー素晴らしい、スパイ活動にいいですね」


「ちーがーう。ここじゃよここ」


「んー? ああ! 体内! ナノロボットと言うことですか!

これは医療ですかね、いや、飲み物混ぜて暗殺なんかにも・・・・・・」


「そうじゃないぞ。フフフッ、わしじゃよ」


「はい?」


「わしがロボットなのだ」


 そう言うと博士は目玉を超速で動かして見せた。


「うわっ! えー!? でもまさか、いや、おおお・・・・・・」


「はっはっは! 言葉も出ないようじゃな」


 物陰からそう言って現れたのは本物の博士。

目の前の博士がロボットであることにもはや疑いはない。


「お、驚きましたよ! 博士!」


「はっはっは! その顔が見たくて隠れていたのだ。

どうだ、この出来。瓜二つだろう?

一番身近な人間である君を騙せたんだ。人かロボットかの見分けはつくまい」


「ええ、確かにすごいです。ですが・・・・・・」


「うん?」


「どの辺りが世界最高のロボットというわけなんです?

見かけによらず超パワーを秘めているとか?」


「いや、歩く速度も力もわしと全て同じだ。だからこそ、いいんだぁ・・・・・・」


「ま、まさか、博士・・・・・・」


「ふふふっ、わしってかっこいいなぁ・・・・・・」


「フフフッ、本当じゃなぁ・・・・・・」


 ウットリと自分のロボットと見つめ合う博士。

 助手はその様子に呆れ、ため息をつくとポケットから銃を抜いた。


「な! どういうつもりだ!」


「それはこっちのセリフですよ。これまで博士の研究のお手伝いをしてきたのは

テロ組織に完成した発明品を売りつけるため。

しかし、この有様。まったく体の力が抜けますよ」


 そうは言うが助手の銃の照準はしっかりと博士に狙いをつけている。


「しかしまあ、なんです。そのロボットに価値はないが

人間そっくりにロボットを作れるのなら

テロ組織の首領の影武者、あるいは敵対国の要人の

成り代わりなんてこともできるかもしれない。

博士、貴方には一緒に来てもらいましょうか」


「そんな! やめろ! やめてくれ! お前もそんなにわしが好きなのか!」

「そうじゃ! やめるんじゃ! わしはわしと離れたくない!」


「黙れ気色悪い! 抱き合うな! ほら、来るんだ! ・・・・・・うっ!」


 助手は背後からのドンと抱き着かれ、言葉を詰まらせた。

振り返ると


「は、博士? あ、うわ! まだ――」


「そう、一体だけじゃないぞ全角度を一度に見たいからな」


「左向いたわし」

「右向いたわし」

「後ろ姿のわし」

「斜めのわし」

「下から見上げるわし」

「頭頂部を向けたわし」

「はにかむわし」

「悲しげな顔のわし」

「怒り顔のわし」

「わし」「わし」「わし」「わし」「わし」「わし」

「わし」「わし」「わし」「わし」「わし」「わし」


 助手の悲鳴はまるで蜂球のように重なり合った博士たちに遮られ

やがて聞こえなくなった。


 博士は恍惚な笑みを浮かべ、自分の姿を眺めるのであった。


「やっぱりわしは世界最高じゃなぁ・・・・・・」

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