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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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大きなカブの

 とある老夫婦が自分の畑に収穫にやってきました。


「まぁ、大きなカブ! おじいさん、これ抜いてみましょうよ! ほら早く!」


 今まで誰も見たことがないとてもとても大きなカブ。

おばあさんはそれを前に大興奮。


「お、おお」


おじいさんは唖然としつつ、そう返事をし、さあ作業開始です。

 おばあさんはおじいさんの腰に手をかけ

おじいさんと息を合わせてカブを抜こうとします。

 ですが、カブはまったく抜けません。

これじゃ無理だと、おばあさんは孫娘を呼んできました。


「おじいさん、私もがんばるね!」


 うんと頷くおじいさん。意気揚々と孫娘はおばあさんの腰に手をかけ

三人、力を合わせてカブを抜こうとしましたが、やっぱりカブは抜けませんでした。


 孫娘は二人にちょっと待つように言うと、犬を連れて戻ってきました。

おじいさんはそれを見て、少し微笑みました。


 おじいさんとおばあさんと孫娘と犬は、力を合わせてカブを抜こうとしましたが

それでもカブは抜けません。

 犬はその場から走り去ったと思ったら猫を咥えて戻ってきました。

猫は口に死んだネズミを咥えていました。


 おじいさんとおばあさんと孫娘と犬と死んだネズミを咥えた猫は

力を合わせてカブを抜こうとしましたが、それでもやっぱりカブは抜けません。


「あーあ、パパとママがいたらなぁ。きっと力を合わせて抜けていたのに」


 孫娘がそうぼやきました。


「・・・・・・あの二人の話はするなと言っただろう」


 おじいさんはカブを見つめたままボソッと呟きました。

孫娘は父親と母親が失踪した時、幼かったから忘れてしまったのでしょう。

 あの二人が自分に酷い虐待をしていた事。

 そして殺そうともしていたこと。


 おじいさんはそれを口にしようとは思いませんでした。

あの日、この畑の奥深くに二人を埋めたことも。

そしてその位置がこのカブのちょうど真下であることも。


 おじいさんが手を抜くからカブは抜けません。

たとえ腐って消えて、また新たなカブが生えてきても

今後もずっと、ずっと・・・・・・

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