おじいさんとピノッキオ
ある日、子供が大好きなおじいさんは
わが子のように可愛がっているピノッキオと共に街へ繰り出しました。
おじいさんが駅近くの人通りが多い広場で立ち止まると
たちまち人が集まってきました。
それもそのはず。
そのピノッキオは目がくりくりと大きく、鼻は高く、とても可愛らしい男の子なのです。
「この子、操り人形に見えるじゃろ? でもね、実は自分の意志で動くのじゃよ」
おじいさんがそういうとピノッキオは
ほいほほいっといった調子でコミカルな動きをしました。
「カワイイ!」
「珍しいー!」
「写真とってもいいですか!?」
「握手してもいい?」
おじいさんは笑顔で頷きます。
女の子たちは大はしゃぎ。
とそこへ・・・・・・
「あのーちょっといいですか?」
そう声をかけてきたのは複数名の警察官。
おじいさんの顔からスッと笑みが消えます。
警察官はそそくさと立ち去ろうとするおじいさんとキノッピオを囲みました。
「その操り人形を良く見せてもらってもいいですか?」
『僕はピノッキオ! 星の女神さまがお父さんの願いを叶えてくれて
こうして動けるようになったんだ!
それだけじゃないよ! 良い子になったら、人間にしてくれるって!』
「あーいいですから。さ、貸して」
『放して! 放してよ! 触らないで!』
「裏声はやめなさい! ほら! よこして!」
「ああ! ピノッキオー!」
「・・・・・・この目の部分にあるのはカメラですね?
実は盗撮映像がネット上に出回っていまして
その背景からこの辺りのものだと」
周りにいた女子高生たちがサッとスカートを押さえました。
「署まで・・・・・・あ! 待て!」
おじいさんはピノッキオを置いて逃げ出しました。
が、すぐに捕まりました。
盗撮映像を見て毎晩鼻の下を伸ばしていたおじいさんは
ガクリと肩を落とし、糸の切れた操り人形のように動かなくなってしまいましたとさ。




