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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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安らかな行進

 ハッピーバースデー。・・・・・・私。

気づけば随分長生きしたもんだ。

しかし、誕生日の朝だというのに今日も配給食。

栄養は豊富らしいがふふふっ、死刑執行前の囚人だって好きな物を食えると言うのに・・・・・・。

まあ、禁じられていては仕方がない。

 尤もここ数年食欲はないから構わんのだけどな。

それどころか何も湧かない。心まで干乾びているようだ。

 発展した医療のおかげでまだまだ生き永らえることはできそうだが

ただそれだけだ。

そう、体は良くても心がなぁ・・・・・・。




「と、いうわけで自分の足で歩けるうちに来ましたよ。

よろしくお願いしますね」


「はい! 貴方様の人類への献身、心より敬服します!」


 係員の男は輝かしい目に爽やかな笑顔でそう言った。

だが、ただの決まり文句だろう。

 まったく、増えすぎた人口と高齢化問題で国が安楽死を推すとはなぁ。

まあこれも時代だ。

それでも昔の人に比べると大分長生きしたんだ。

平均寿命である百五十歳まであと少しだったが、まあどうでもいい。

良い頃合いだ。何ならもう少し早くても良かったかもしれない。

 それにしても他の老人はあの特に感想の無い、無味無臭の配給食を食べて

よくもまあ、日々になんの楽しみもなく暮らせるものだ。

私はもう十分だ。ああ死にたい死にたい。


「はい、では説明に入らせていただきます!

今お入りになられているこちらのカプセルの蓋が閉じられますと中がガスで満たされ

苦痛なく、眠るようにお逝きになることができます!

では、何かご質問はございますでしょうか?」


「質問ねぇ・・・・・・特にないかな・・・・・・」


「じゃあ、蓋を閉じさせていただきますねー!」


「ふふふっ、ゆっくり閉じるんだな。まるで十三階段。

・・・・・・あ、じゃあ一つ思いついたんで訊こうかな。

死んだら私はどうなりますかな? やっぱり地獄行きですかな?

これは自殺みたいなものでしょう」


「さあ、それは何とも・・・・・・。ですが肉体は再利用されます」


「再利用? 肥料にでもされるのですかな? まあ文句は言いませんが」


「いえ、食肉に加工され高齢者に届けられます。

貴方もお食べになっていたでしょう?」

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