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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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モロ太くんと睡眠学習装置

 眠ることが大好きなモロ太くん。

ですが「このままじゃいかん」と、パパがボーナスをはたいて買ってきたのは睡眠学習装置。

 モロ太くん、訝しがりながらもそれを装着し秒で昼寝。

 目を覚ますとあら不思議。

学校で出された宿題をすらすらと解きました。

これで成績上位間違いなし!

と、思ったのですが考えても見ればモロ太くんのパパだけが

そんなお得商品の情報を持ち合わせていたわけがありません。

むしろ後発組。

 みんなすでに装置の事は知り、使用していたので結局順位は変わりませんでした。

モロ太くんが眠ることが得意と言っても、総睡眠時間は他の小学生とそう変わりありません。

戸棚からママの睡眠薬をくすねて飲んで、みんなに追いつこうとします。

 しかし、こんな素晴らしい商品が世に出れば、当然便乗しようという会社もあるわけで

睡眠導入装置なるものが発売され、みんながそれを購入。

睡眠学習装置を買ったばかりのパパは「流石にそれは買えない」

「起きている間も勉強なさい」とモロ太くんに言い、逃げるようにパチンコ屋に出かけます。

 あっちもこっちも眠る人ばかり。

いずれ起きている時間よりも眠っている時間のほうが長くなったりするでしょうか。


 さて、眠るのが得意という唯一のアイデンティティーを奪われたモロ太くんは

昼寝カフェなどを横目に見ながら今晩も良く眠れるようにするため

ウォーキングに励むことしかできませんでしたとさ。




 って終わらないのがモロ太くん。

一人、電車を乗り継いで向かう先は装置を開発した研究所。

守衛をかわし、潜入成功。一番偉そうな人を見つけました。

ネームプレートを見るにここの博士のようです。

モロ太くんは博士に泣きながら縋り付きました。


「頼んます! 後生やから最新の装置を使わせてーな!

あるんやろ!? みんなに勝ちたいねん!」


「まあ、あるにはあるが・・・・・・」

モロ太くんの涙、鼻水を嫌そうな目で見ていた博士はチラリと大きな装置に目を向けた。


「おお! あれかいな!」


「ああ、だがまだ開発中――こらこら! 勝手につけるな!」


「せやけど博士、実験台は必要やろ?」


「馬鹿を言うな。子供を実験台になんて・・・・・・それにご両親の許可を得ていない」


「はるばるこんなところまで一人で来たんや!

胸張って送り出したに決まってるやろうが!

ええからはよ動かさんかい!」


 そう言うとモロ太くんはパタリと眠りについた。

嘘であったが、博士はその勢いに飲まれ装置を起動させた。


「開発段階のこの装置は従来のもののおよそ千倍の学習速度を誇る。

これにより短時間の睡眠で更なる知識の詰め込みが可能となった。

尤も市販の際は精度を落とし、もっと安定性を優先させるつもりだが果たして・・・・・・お、完了したようだな」


「・・・・・・おはようございます。博士。

先程の私の無礼な振る舞い、どうかお許しください。

大変申し訳ございませんでした。

急に訪ねてきた上、私の身勝手なお願いを聞いてくださり

博士に対して感謝の念に堪えません」


「お、おぉ・・・・・・すごい変貌振りだ。

とてもさっきまでの鼻水擦りつけてきたクソガキとは思えん・・・・・・。

知識は人を理知的にさせるのだろうか。

脳が焼き切れるかと思ったがどうやら成功のようだな」


「ええ大成功ですとも。脳で渦巻く知識の海に溺れそうなくらいですよ。

小学生の学習内容に留まらず数学、物理学、天文学、化学、生物学、政治学、法学、経済学

教育学、哲学、宗教学、考古学、歴史学、地理学、文学、芸術、心理学、更にですねぇ」


「いや、もう充分だ。内容は開発者である私が良く知っている」


「これはこれは失礼を」


「開発段階だから厳選せずに組み込んだのだが・・・・・・うっ!」


「どうしたんです? 博士」


「君、頭が、その、大きく、膨らん・・・・・・うわああああ!」


「はっはっは! ご心配には及びませんよ博士。それにご覧の皆さん。

知識を詰め込み過ぎて頭が破裂するなんてオチはありませんから。

あなた方はただの人類の行く末、その姿

可能性の一つを目の当たりにしているだけですよ」


 そう言うと、モロ太くんはどこか遠くを見つめました。

それは未来か、あるいは宇宙なのかその両方なのか

それともまた別の世界なのか・・・・・・。

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