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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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オオカミと七番目

「いい? 私の可愛い子たち。ママは用事で外に出るから留守番をお願いね。

最近は・・・・・・そう、悪いオオカミがうろついているから決してドアを開けちゃダメよ」


「オオカミってこわいのー? みつかったらどうなっちゃうの?」


「怖いわ。みんな連れ去られて食べられちゃうの。

死ぬのよ。わかるわよね? 死ぬってどんなことか。

ああ、泣かなくていいのよ。大丈夫。でも返事もしちゃダメよ。

ただ黙って隠れるの。物音を立てちゃダメよ」


 ママが外に出てしばらくすると玄関の戸を叩く音が聞こえ

七人の子供たちは口に手を当てました。

お互いを見合い、なんだかおかしくてクスクス笑いました。

楽しい気分。でもそれは窓ガラスが破られるまででした。

 みんなはビックリして一斉に隠れました。


 一番目は、机の下に。

 二番目は、ベットの中に。

 三番目は、火の点いていない暖炉の中に。

 四番目は、台所の家具の隙間に。

 五番目は、箪笥の中に。

 六番目は、洗濯機の中に。

 七番目は、大きな柱時計の中に。



 七番目は震えながらオオカミの迫る足音に耳を澄ましていました。

 遠ざかるとホッと一息。


 ですが

 すぐに他の子供たちの悲鳴が聞こえてきました。


 一つ目。

 二つ目。

 三つ目。

 四つ目。

 五つ目。

 六つ目。

 

 そう、みんなあっさり見つかってしまったのです。

そして声は聴こえなくなりました。

 みんなママの言っていた通り、殺されてしまった。

そう考えた七番目はショックの余り気絶してしまいました。



 七番目の意識が戻ったとき、ちょうどママが帰ってきました。

 ママが子供たちを呼びます。

 でも返事はありません。

おかしいぞ、とママが思った時、七番目は言いました。


「ママ、ぼく、時計の箱のなかにかくれているようっ!」


 ママは急いで柱時計の中から出してやりました。

 その時です。

 七番目が叫びました。


「あ! オオカミ!」


 突如部屋の奥から現れたオオカミがママを取り押さえたのです。

そうです、オオカミは部屋の中に隠れていたのです。

 その素早い動きにママは身動き一つ取れませんでした。

そしてオオカミは恐ろしい声で吼えました。


「カクホオオオオオ!」


「よし、行け! 行け!」

「容疑者確保!」

「ハサミを持っているぞ! 捨てさせろ!」

「まだ子供がいるぞ!」

「ホゴオオオオオオ!」


 次々現れたオオカミたち。

まだ幼い子供である七番目には何がなにやら。

 でも、オオカミならぬ警察の手によって幼児連続誘拐犯は逮捕され

無事、それぞれの親のもとに返された子供たちは幸せに暮らしましたとさ。

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