表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

359/705

北風と太陽の戦い

 ある日のことです。北風と太陽が、どちらが強いか言い争いを始めました。

 しかし、議論は堂々巡りに。どうやって決着をつけるか考えていると、てくてくと野原を歩いている一人の旅人が目に入りました。


 よし、ちょうどいい。あの旅人の上着を多く脱がせたほうの勝ちとしよう!


 話はそうしてまとまり、北風が張り切って準備を始めました。太陽はそれを見て、にやりと笑いました。

 馬鹿め、人間は寒いと服をたくさん着るんだ。まったく、北風の奴は人間を知らなさすぎる。


 さあ、開始です。北風がぴゅうううっと旅人に息を吹きかけました。すると旅人は、うっと身を固くして上着を手で押さえました。

 その様子を見て、北風はしまったと焦ります。しかし、もう遅いです。太陽は北風の狼狽ぶりをニヤニヤと眺めます。

 北風はさらに息を吹きかけます。すると太陽は我慢できずに大笑いしました。

 北風は無視して、がんばって息を吹き続けました。

 ひとしきり笑ったところで太陽は、そろそろ代わるようにと北風に言いました。北風は黙って応じました。


 さあ、太陽の番です。

 太陽はギラギラと輝き、うーんと暑くしてやりました。

 しかし、おや? 旅人はまだ上着を脱ぎません。

 それならばと、太陽はもっと力を入れました。しかし、旅人はうずくまったまま上着を脱ごうとしませんでした。

 これはおかしいぞ……。

 そう思った太陽は旅人をよーく見つめました。すると、あることに気づきました。


「おい北風! あの男をわざと凍死させたな!」


「さあ、どうだろうね。でも、こうなったら仕方ない。勝負は引き分けということで」


「いいや、納得がいかない! お前の反則負けだ!」


「ふー、はいはい。それでいいよ。まあ、君には無理な芸当だものね」


「……それはどういう意味だ?」


「君には人一人殺せないってことさ。まあ、どうでもいいけど。君の勝ち、君の勝ち」


「……もう一度勝負だ」


「まあいいけど、人影が見えないから、しばらく待つことになりそうだ」


「いや、こんな峠じゃなくて、たくさんの人がいる場所で! 今度はもっと期間を長くしてやろう!」


 太陽は憤慨しながらそう言いました。北風はやれやれ、と了承しました。


 今度は太陽の番から始まります。

 今年の夏はやけに暑く、鰻登りに気温が上がっていきました。

 人がばたばた倒れても、まだまだまだまだ収まらず……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ