私たち……!
「ちょっと、そこのあんた待ちなさいよ!」
「あ! お、おまえは……」
とある日の放課後、その女子高校生は坂の上で、男子高校生を後ろから呼び止めた。
「やっぱり、朝の痴漢男ね!」
「だ、だから痴漢じゃねーし! ぶつかっただけだろ……」
「でも、私の胸を触ったじゃない!」
「いや、触ってないってば……」
「てか、あんた。転校生だったとはね」
「ああ、やっぱりその制服、うちの学校のだったか」
「そ、まさか隣のクラスだったとはね。学校では一応気を使って話しかけなかったけど、まだ話はついていないからね!」
「そ、そんな……」
彼ったら戸惑って、ああ、ほんとかわいい顔してるなぁ。今朝、通学途中にまさか出会い頭にこんなイケメンとぶつかるなんてね。そしてなんと、その彼がうちの学校の転校生だったという王道的展開!
でも、うちのクラスじゃなくて隣のクラスに入ったのは残念。まあ、さすがに漫画みたいにそう都合よく行かないってことね。
でも、このチャンスを逃す手はない。そもそも、ぶつかったのだって実は……ふふふ。
さあ、ここからが大事。責めすぎたらうざがられちゃう。そうね、ケーキで手を打つとか言ってそれで一緒に――
「って、ちょっと! どこに行くのよ!」
「いや、普通に帰るんだけど……」
「待ちなさいっての! この痴漢!」
「だから、違うって、いい加減に、おい! 触るな、うわ」
「あああああああああ!」「あああああああああ!」
いたた、まさか一緒に階段から転げ落ちるとは……でも、これはこれで親しくなるチャンスかも……。
いや、こういうときって男が身を挺して守るものでしょ!? 抱きしめたりして、『大丈夫か?』なんて言ってさ! ほら! 私の体が投げ出されて……え?
なんで、私がそこにいるの……?
え、まさか私たち、入れ替わって、えぇー! そういう展開!? これから私、彼の家で暮らすの!? お風呂とか、えぇー!
ん、あれ? 私、体が動かない……?
「いてて……おい、おいおいマジかよ……」
痛っ! 踏まれた! ……って、あれ? え? 彼が私の体に駆け寄って……でも、じゃあ……。
「嘘だろ、息してない……くそっ!」
あ、あいつ! 逃げた! てか、え、入れ替わったって、え? まさか、そっちと……?




