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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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大捜索!

 神は果たして本当に存在するのか。誰もが一度は思い、またその疑問を口にし、議論を交わしてきた。

 誰一人としてその存在を証明、証拠を掴んだ者はいないが『神が創ったのでないなら誰がこの星を、あらゆる法則を創ったのだ』『神でもいないと説明しようがない』あるいは『いるに決まっている』『神はいます。夢に現れお告げをくださいました』と妄言、妄信。そして『いてもいなくてもどっちでもいい』と半ば思考放棄。結局のところ、皆なあなあで済ませ、はっきりさせようとはしなかった。

 しかし、この男は違う。


「神を探せ」


 と、一言。世界一の金持ちであるその男が金に物を言わせ、大捜索が始まったのだ。

 人工衛星で地球上をくまなく調べ、怪しい箇所、漏らした箇所には隊列を組んだヘリコプターや飛行機を飛ばし、ドローンを二十四時間稼動させ、未開の地は全て制覇した。

 さらに宇宙にロケットを飛ばし、月、地球の周りを調べ、そして人海戦術。懸賞金をかけ、大勢の人間を動かし、下水道の中までも探させた。

 地球全土がある種のお祭り騒ぎに揺れ、さすがに金と時間がかかりすぎたが、神を探す過程で新発見した生き物や植物で新薬の開発や技術の促進。世界一の金持ちであるその男はさらに儲け、富も名誉も鰻上りになった。

 多くの人に感謝されもしたが、男は善人というわけではない。神を探すそもそもの理由。捜索開始前から男は高齢で、自分はそう長くはないと考えていた。死を、地獄を恐れていたのだ。

 神を探し出し交渉し、特別扱いをしてもらう。そのためにはあの世に運べない金など、どうでもいい。また手段も選ばなかった。『神は自分の中にいます』と口にする宗教家たちを集め、文字通りその体を内部まで、くまなく調べもした。

 それはそれで男は楽しんだが結局、神は見つかることなく今まさに独り、ベッドの上で寿命が尽きようとしていた。

 看取る者はいない。結婚は何回かしていたが家族はその異常性を恐れ、屋敷から出て行った。

 孤独な死。その間際、男が出した結論は……。


「……神はいない。つまり天国も地獄もない。そしてこの財力。人々からの支持、時に恨み、孤独も含め……そう、私こそが神なのだ」


 それが男の最後の言葉だった。




 …………男の死後。その足がピクリと動いた。


「ふー、危ない危ない。本気で探しにくるんじゃもんなぁ」


 と、神は男の足の裏からペリペリペリと剥がれるように離れ、開いていた窓からヒラヒラとどこかへ飛んで行った。

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