ホームランを求めて
――カキーン!
青空に伸びる金属音。ああ、この音。最高だ。やはり野球はいい。
……まあ打ったのが相手チームなのはいただけないが、それでも試合は接戦だ。どういうわけかこの草野球場、ホームランがバンバン出る。やはり草木、緑が多い中でやると何かこう、人間の野性的本能が刺激され、力を引き出せるのだろうか。
ホームランを打った者の話では時々、ボールに引き寄せられるようにバットが振られるとか。あるいはバットにボールが引き寄せられるとも。
まあ、ピッチャーは苦い顔をしているが、私も早く体験したいものだ。
――カキーン!
おっとまたホームラン。やれやれ。社会人といえど小遣い制のメンバーが多いゆえ、ボールは貴重品だ。当然、予備はあるが失くすわけには……よし、あった。
しかし随分、グラウンドから離れてしまったな。早く戻らな……ん、あれは……。
嘘だろ。……し、死体? そ、それに、これは野球ボール。他にいくつも……。
なぜここにこんな。まるで……まさか、この死体、つまり自分を見つけて欲しくて幽霊がホームランを打たせていたのか……?
……。
よし、じゃあ私の番も頼むぞ。
死体を落ち葉と枝で隠し、そう念じたあと、意気揚々と私はグラウンドに戻るのだった。




