招集
「おいっす」
「ん、ああ、久しぶり」
「おー、部署が変わって以来だな」
「そう、だな……」
「ん、どうした? 元気ないな」
「いや、この状況で堂々としていられるお前がすごいんだよ」
「へへ、そうか?」
「どうして何もないだだっ広い部屋に集められたのか、待っていてもまるで説明がないじゃないか。それに知らない人ばかりだし、全員、うちの会社の人か?」
「ああ、系列の奴だな。ほら、あれ見ろ。あいつは外回りのサボり魔、菊池だ」
「サボり魔? ……ああ、確かに覇気がない顔をしてるな」
「おいおいおい、案山子の鈴木もいるぞ。あいつ、仕事してるフリが上手いんだ」
「へぇーって、詳しいなお前は」
「それにあいつは刻みの竹中だ。よく来れたな」
「刻み……分刻み? 忙しい人なのか?」
「いや、刻むようにトイレ休憩を挟むんだ」
「結局サボりか」
「おっと、あそこにいるあいつは保菌の遠藤だ。よく呼べたなぁ」
「話の流れからしてあいつもサボり、仮病魔ってことか?」
「おいおい、カフェめぐりの鈴木もいるよ! すげえなぁ」
「また鈴木か。しかもそのまんま完全にサボりだな。いや、なんでちょっと興奮してるんだよ」
「まさかサボりのオールスターを見れるなんてな。すげえぜ……」
「涎ジュルリじゃないよ、出てないよ」
「かくいう俺は死神の大城だ」
「……冠婚葬祭か。何人死んだことになってんだ? そもそも、よくそれが通るな。俺ら――」
「おい! 正面突破の荻原に脅しの佐藤、神隠しの尾藤までいやがる!」
「サボってるやつばかりじゃないか! いや待て、一体どういうことだ? まさか不真面目な社員が呼ばれて、いや、でも俺が呼ばれるのは変だ。一回もサボったことないのに……」
「さあ? 無能の坂本だからかな」
「無能!? え、俺が!? そんな二つ名が、えええ!? ホントに!? 嘘だろ!」
「有名だぞ。ほら、みんな、うんうん頷いているぞ」
「むの、無能!? いやいやいや、やっぱり嘘だろ!?」
「驚きすぎたり、そうやって聞き返すところがなぁ出てるよ、うん」
「うぐぅ……でも結局なんで俺ら……な、なんだこの振動は!」
「壁だ! 壁が迫ってきているぞ! はっはぁ! 一斉処分ってわけだ!」
「そんな安易な! 非人道的だ!」
「まあスクラップも仕方ない。だって俺ら、会社の部品だもん」




