責任の所在
「……う、あ、あれ? ここは……」
「気づいたようだね。ここは治療室だ」
「治療……」
「覚えていないかね? よく思い出すんだ。ほら」
「うーん」
「さぁ、思い出して」
「ああ、乗っていた宇宙船が……」
「うんうん。そうだ、君は乗組員だ」
「壊れて……それで、それで私は……」
「そうだ、その調子。さあ、どんどん思い出して」
「……他のみんなは?」
「君だけだ。君だけなんとか意識を取り戻したんだ。それで、どうだ? 原因などは」
「原因……そう、たしかあれは……」
「どうなんだ?」
「思い出せない……」
「ほら、よく集中して。さあ、大丈夫。思い出せるはずだ」
「待って、今、記憶が……そうだ」
「どうだ?」
「電力室で、火事が……」
『そんなはずはない! 完璧だったはずだ!』
「い、今の声は誰です? それにどうして私は動けないんですか!?」
「落ち着いて。今のは気にしなくていい。それに動けないのは怪我のせいだ。さ、よく思い出して」
「えーっと、うー、あ、ああああ!」
「どうしたんだね」
「思い、出しました……。彼、乗組員の一人が、パニックを起こして、それで」
「ほう、それで?」
「電力室を滅茶苦茶に破壊して、それで……それで、宇宙船が爆発して……。でも、あんな、あんな事故から私はどうやって助かったんだ?」
『よし、よおおおし!』
『良かった!』
『ふーっ!』
『やれやれだ』
『しゃぁ!』
『ホッとしましたなぁ』
「な、なんですこの声は!? 誰なんです!? 一体、何人いるんですか!?」
「……彼らはあの宇宙船の開発に関わった企業の人間だよ。君も知っているだろう? たくさんの企業が金と技術を出し合い、あの宇宙船は作られた。部品、着工箇所。担当したどの企業に事故の責任があるか調べていたという訳だよ」
「それって……つまり人災だったからみんな、喜んでいる訳ですか? あんまりだ! 私の仲間が死んだというのに! 告発してやるからな!」
「それは無理な話だ」
「……口封じするつもりですか」
「いや、君にはもう時間がない」
「それは、どういう……」
「無事だったのは脳だけさ。こうして今、機械につないでやり取りできているが、もうそれもあと少し。君から有力な証言を引き出せてよかった。感謝するよ。それじゃあ、おやすみ」
「まっ……」
機械と繋いだだと……このためだけに……私は、私は……ああ、暗い……そんな、死……なんて奴らだ……。
……いや、待て。じゃあ、さっきのあの記憶。突然、脳裏に浮かんだ映像はもしかすると、作られたものなのでは……。




