表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

285/705

ある名場面

「……ケンジさん? 嘘、そこにいるのはケンジさん、貴方なのね!」

「……」


「ねえ、そうなんでしょ? ねえ……」


「チッ」


「……ああ、そうだよ。ミホさん。僕だ……」

「ケンジさん……嬉しい。でも、どうしてこっちに来てくれないの?」


「それは、その……」

「私ね――」


『ホンマかいな!』『ナハハハハハ!』


「ごめん、テレビの音で聞こえなかったよ……」

「ああ、そう。そうね……」


「……チッ」


「ケンジさん……私、あなたにずっと会いたかったのよ」

「……本当かい? 僕もさ。また会えたらどんなに嬉しいかって、でも……」


「ケンジさん……」

「……ああ、わかってるんだ。僕はもう死んでいるんだってことは。だから、本当は君に会わない方がいいんじゃないかって、君を、君を幸せにできないから……無意味なんじゃないかって……」


「バリボリバリボリ」


「ケンジさん……そんなこと、そんなことないわ!」

「ミホさん……相変わらず優しいね。君を置いて死んだ僕を許してほしいとは言わない。ただ、どうしてもこれだけは言いたいんだ」


「ゴキュゴキュゴキュ」


「なに、聞かせて……?」

「君を、君を、ふぅ……」


「……チッ、チッ」


「あー、君をね、君をいつまでも愛しているって!」

「ケンジさん!」


「バリボリガリ」


「喧嘩したまま僕は死んでしまったからね……。これだけは、どうしても伝えたくて」

「ケンジさん……あのね。実は」


「ん、なに? ああ、もしかして、もう他に好きな人が……いいんだ、当然さ。君には幸せになってほしいから」

「違うの。実は私もあの後すぐに事故にあって」


「それは本当……ああ、なんてことだ……」

「いいの、ケンジさん。だって私たち――」


「ババリボリボボリ……ゲホッゴホッ、オエッ」


「……私たち向こうで幸せになれるじゃない!」

「ああ、ミホさん!」


 寄りあい、抱き合う二人。それを祝福するような光が包み、その姿を薄く、薄く、そして消えた。

 ……と、部屋の明かりをつけた女がぐぐぐっと背伸びをした。


「やーっと消えたか。あの男が来るまでずっーとシクシク泣いてやがってあの女。

しかし、霊道か何か知らないけど、ほんとひっきりなしに今みたいな連中が来て困るよ。せっかくのテレビタイムがまったく……グスッ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ