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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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281/705

正気

「ナニガオカシイノカッツテンダヨオラアアアアアア!」


 その動物の叫声みたいな言語能力だけど……なんて言えない。だってすごく怖い。金髪のトサカ頭や耳につけたピアスもそうだけど、単純にぼくは大人の男が怖いのだ。


「あ、あ、あのっひっひっひい、す、すみませんでした!」


 ぼくだってもう大人と言えば大人だ。情けない。でも仕方ないことなんだ。幼い頃から、ぼくは理不尽に怒鳴られたりしてきたんだから。

 なんでも、ぼくの顔は人を苛立たせるらしい。さらに悪いことにぼくは人に怒られたりすると顔がニヤついてしまうという悪癖があった。

 だから今もそうだ。道を歩いていたら肩がぶつかって絡まれてこの有様。 

 避けようとはしたんだ。でもメトロノームみたいに揺れるものだから……。

 ああ、この顔。ぜったいヤバい人だ。こんなにキレているのも薬か何かやっているからかもしれない。そう思うと余計に怖い。ああそうだ。ぼくはこうやっていつも余計なことを想像し、勝手に怖がってしまうんだ。


「テメェナメテンヌカ!」


「ひいひっ、ひいひひいぃ!」


「テメエブンナグッゾ!」


「ひ、ひひ、殴るのは、お互いに! ひひひぃ、よくないかと!」


「サッキカラオレヲ、ワラッテンノカテメエ!」


「ひひい、しゃ、しゃくりです、これは、ひひ、ひひひひぃ!」


「ウソツクンジャネエ! コロガスゾテメエ!」

 

「ひひっひいひいちがう、ひひひ」


「オカシイノカヨゥオメーヨゥ!」


「ひひっひひひ、あ、あのひひひ、あのひひ、ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」


 ああ、殴られる……。早く、これを、ニヤつきを止めなきゃ。ひひ、そうだ、指で口を引っ張っろう。

 ひひひ、まだ、ぼくがぼくを笑っている。

 ひひ。消さなきゃ。ひひひ。笑うな。ひひ、ひひひ。


「ッアアアアアアアアアア!」


 ひひ、そうだ、笑うな。笑うな。ひひひひひひ。

 ん? なに? みんな何か言っている。


 イカレテル?

 ヤクチュウ?

 アタマガオカシイ?


 そうなんです。助けてください。この人、この、ぼく? ひひひひ、そんなことない。ぼくは普通の。

 ひひひひ。ひひ、なんで? そうだよ、ぼくはただ……あの目に映ったぼくをどうにかしたくて……。


 ひひ・……あ。

『ひ』ってあひひひひ。二つ並ぶと飛び出た目玉みたいだ。ひひ。ひひ。ひひ……この人、おかしいです。

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