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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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コールドスリープ

 さらばだ息子よ。人類よ。私はこのコールドスリープ装置で眠りにつく。あの忌まわしき伝染病が解決されるまでな。

 財産の大半を注ぎ込んだものの、結局一つしか作れなかったが恨みはするな。私はまだそれほど老いてはいない。息子など、子孫など、またいくらでも作れる。一族が絶えることはない。

 探しても無駄だ。この書置きを目にする頃には厳重にロックされた扉の向こう側で、もう眠りについているだろう。尤も、そんな時間もないだろうがな。

 ああ、願わくば、次目覚める時は輝かしい未来の世界であらんことを…………。





「お目覚めですか」


「……お、おお。ここは? いや、今何年だ?」


「アナタが眠ったとされる日にちから……およそ五百年後ですね」


「五百年! よくもまぁそれまで……いや、大金費やした甲斐があったというものだ。

それで伝染病のほうはどうなった? 人類が死滅する勢いだったが、こうしてアンタが生きているところを見ると、ワクチンか何か開発できたんだろう?」


「あー、五百年……そうですよね、やはりそうか」


「ん、何だ?」


「ああ、いや実はアナタが眠ったとされる日から、そう経たずに宇宙船がやって来まして」


「宇宙……船? それは」


「ええ、宇宙人です。彼らの技術で伝染病はあっさり解決。それから程なくして続々と他の惑星からも宇宙船がやってきて交流が始まったのです」


「なんだ、それじゃあ……いや、眠って損したってこともないだろう。今、そんなことを言っても結果論だ。

もしかしたら、その宇宙船が来る前に伝染病にかかって死んでいたかもしれないしな。

うん、そうだ。私は間違ってなかった。あぁ、それでここはどこなんだ?」


「ここは博物館と併設されている研究所です。駄目で元々でしたがアナタを見つけ、無事解凍できてよかった」


「あぁ、感謝するよ。それも宇宙人とやらの技術のおかげだな。不安もあるが世界がどれだけ発展しているか見るのが楽しみだ。私は優秀だからな。必ずこの世界でも、のし上がって見せるさ」


「確かに優秀。健康状態に問題なしっと。よし、おーい! それじゃ、運ぶ準備の方を頼む」


「ん、運ぶ? どこにだ? 病院か?」


「展示ブースですよ。博物館のね。大丈夫、ベッドもありますから」


「展示……ま、待ってくれ! 確かに五百年前の生きた人間が珍しいのはわかるが展示するほどのものじゃないだろう? ほら、見た目だってアンタと変わらないじゃないか!」


「ああ、これねメイクなんですよ。アナタを余り動揺させないためのね。擦ればほら」


「うわ! なんだその色! その模様!」


「舌だってほら」


「うお! お前人間じゃないのか!?」


「いえ、地球人の血も少し入ってますよ。他の惑星との交流が盛んになり、異種間結婚が多く行われた結果です。

ただ、そのせいで純粋な地球人というものが、いなくなってしまったのです」


「ま、待て、わかった。はははっ、私は物分かりがいい方なんだ。死後に剥製にしてくれていい!

ほら、宇宙に行った猿みたいに。だから、閉じ込めるのは……」


「それは良い案ですが、残念ながらやはり生きて動いているほうが需要があるので……。

ふふふっ大丈夫、注射を打ちますから。恐怖も何もかも和らぎますよ。余計な事を口走らないようにね。

……ああ、あとこれは個人的な事なんですが……私の先祖の言伝、悲願でしてね。

『身勝手で強欲傲慢な父に目に物見せてやれ』とね。未来を見せて差し上げますよ。

見るだけですがね。たっぷりといつまでも……」

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