キリギリスと蟻
飲み物良し。
食べ物良し。
備蓄は十分どころか、たっぷりとある。
これなら持ちこたえられそうだ。
と、はいはい、なんですか?
え? あーはいはい。少し食べ物を分けて欲しいって?
あのねぇ、だからそう何度も来られてもね、これは俺が日頃備えていたその結果ですからね。
こんなこと言いたくないけど、怠っていたそちらが悪いんじゃないんですか?
それをまあ、こっちが悪者みたいにヒソヒソと。正直、気分が悪いですよまったく。
アリとキリギリスって知ってますか? そこの坊やはどう? ん? 知ってるよね?
まったく、やっと引き下がったよ。辛気臭い顔で、ほんと嫌になる。
あーあ、グズなキリギリスどもめ。ただでさえ、この避難所は狭いというのに、まったく息が詰まりそうだ。
ははは、それこそアリの巣みたいに狭……ん? 待てよ。群れるのはアリのほうだな。
つまり、この場合は俺が備えたキリギリスで、あいつらが怠けていたアリと言ったほうが正しいか?
まあ、そんなことはどうでも……何だ。俺を取り囲んで。その目は。ちょっと、おい……お――




