クマのピーター
クマのピーターはもうすぐ大人なのにまだまだ甘えん坊。
今日はママが特別な場所を教えてくれるというので、ママのあとについて歩いていますが、飛んでいる蝶々や咲いているお花に気をとられてばかり。あっち行ったりこっち行ったり大変。目的地に辿り着いた頃にはママはもうヘトヘトです。
「さぁ、ピーター、見つけてごらん」
くんくんくん。
ピーターは鼻を高く上げ、美味しそうな匂いをキャッチします。
ゴソゴソゴソ……。
美味しいお魚の頭をガブリ。
海老の殻をパキパキ。
甘い果実の味、ジュルリ。
ピーターはお腹いっぱいになりました。
ママの言うとおり、ここはお宝の山だ!
ピーターはそう思いました。そう、ママが教えてくれたのは美味しいご飯がいっぱいある場所なのでした。
しっかりと覚えたので一人でも大丈夫。ピーターは毎日のように、お宝の場所へ通うようになりました。
そんなある日、ピーターはこれまでにない匂いのものを見つけました。
近づくピーター。おそるおそる……ガブリ。
もぐもぐもぐ。うーん、これは……おいしい!
ピーターは夢中になって食べました。そして、食べきれない分は持ち帰ることにしました。ママにも食べさせてあげたいなぁ、そう思ったのでした。
次の日、ピーターはいつもの場所に行くと、またあの美味しいものの匂いがしました。
それもたーくさんです。
くんくんくん。
あれかな?
……ギロリ。
ビクッ。
のっしのっしと近づいたピーターだったのですが、睨まれ、その場で立ち止まりまってしまいました。
なんだか怖い……。
そう思ったのです。
それに同じような目つきをしたのがゾロゾロいるじゃないですか。
なんか違うなぁと思ったピーターはこの日は大人しく森に帰ることにしました。
「どうしました、刑事?」
「いや……なんでもない。それにしても杜撰だな」
「ですね。口論の末、殺した彼氏をホテルのゴミ箱に捨てるなんて。でも計画性はあったってことでいいんですよね」
「熊がホテルのゴミ箱を漁りに来ていることは、このホテルに勤める者の大半が知っていたからな。
熊に殺され食われたように見せる、何なら綺麗に持ち去ってくれればいいと考えたのだろう」
「残っていたのは腕一本。熊のヤツ、残りはどこに持ち去ったんでしょうかね?」
「さあな。森の中のどこかに埋めたんだろう。そういう習性だ」
「その熊はどうなるんですかねぇ」
「人の味を覚えた熊はやがて人を襲うようになる。いずれは人間と搗ち合うことになるだろうな」
刑事は熊が消えた森を見つめました。
その目はなんだか寂しそうでした。




