自己完結
「なぁ先生。そりゃアンタには感謝してるよ?
話も聞いてくれたし、薬も出してくれた。
でもな、先生。もう、おたくんとこ通う必要はなくなったんだ。ああ、本当さ!
縁は切ったんだよ。……ん、ああ、アンタとじゃない。
心配するな。アンタは最高の精神科医さ! ははは、俺に言われるまでもないか? ははははっ!
切ったってのはアイツとさ。知ってるだろう?
……ピッグマン。
そう、大正解。ピッグマンだ。もう真夜中にアイツの鼻息で起こされることはないんだ。
本当に? アイツは執念深いでしょう?
ははははっ、そんなことはわかってるよ。まったくどこにでもついてきやがる。夜中にそばにいたときなんか、ションベン漏らしそうになったぜ。
でもな、先生。もう、こうして電話をよこす必要はないよ。
そりゃ、アンタにしてみれば食い扶持が減るって、あぁそんな言い方はないよな。
ええ。アンタは金のためにやってるんじゃないってことはこの三年の付き合いでよくわかってるさ。
ただな、もうやめたんだ。
本当の本当に大丈夫なんですか?
おいおい、あまりしつこいのはそりゃ、医者の分を超えてるってもんじゃないのか?
ん? ピッグマン? 本当に消えたさ! 俺の頭の中からすっかりな!
きっかけ? きっかけはなそうだな……愛だな愛。
へへ、彼女さ。結婚したっていい。飲み屋で出会ってな。ん、いや、まだ寝てるよ。悪いな紹介できなくて。
ですが、やはり一度、クリニックの方に来ていただくことは……。
おいおい、くどいぞ先生! 俺はもう大丈夫さぁ。
ねえ、どうしたの? まだ夜中よ……。
おお、悪い悪い。ただの電話だ。寝ててくれや。
なあ、先生。ピッグマンは死んだ。夜中、ベッドで寝てる俺の隣に現れたんだ。
おお、たった今さ。あの野郎、油断してやがった。
しっかりとな、首を絞めて息の根を止めてやったよ」




