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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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210/705

探知

「先生、どうか、どうかお願いします……」


 俺は聞こえないよう、ため息をついた。

 消え入りそうな母親の声。その母が頭を下げ、差し出す厚みのある封筒を、俺はその手から奪い取ってやりたかった。

 が、できるはずもなく、目で追うだけ。超能力者と名乗るその女は黙って封筒を受け取り、深みのある袖の中に入れた。

 母は姉が失踪してから日に日におかしくなっていった。俺が嫉妬するほどの溺愛ぶりだったから仕方ない。まあ、俺が小学生の時の話だが。

 今は高校生。専門学生の姉もそれが疎ましくなり、どっかの男のところへ行ったのではないかと俺は母に言ったが「ありえない」と顔を真っ赤にして声を荒げた。

 ……いや、俺はそう思いたかったのかもしれない。

 一切連絡が取れず目撃情報もない。雲行きは怪しくなるばかりだ。警察の動きも鈍い。探偵も空振り。とうとう自称超能力者の登場というわけだ。

 正直、きつい状況だ。姉は失踪。父親はとうの昔に亡くなり、母は目の前で詐欺師にカモられている。金はもういい。どうにか金輪際関わらないようできないものか。どうせ曖昧なこと言って、たかるだけたかるんだろう。

 と、その自称超能力者は姉の櫛に絡みついていた髪の毛を一本、自分の指に巻きつけ、目を閉じた。


「……地図を」


 母がバタバタと地図を広げる。

 超能力者はそれにサインペンで丸をつけ始めた。

 ペンのキャップを閉じる小気味のいい音。それと同時に母が地図をふんだくった。

 そして、希望に満ちた顔をして家を飛び出した。


 置き去りになった俺と自称超能力者。母がいなくなり、急に部屋の湿度が下がったように感じる。自分の家なのに無音なのが居心地が悪い。が、いい機会だ。俺はちゃんと見てたんだ。どうせ適当につけてたんだろう。


「……あー、いくつか丸をつけてましたけど、そのどれかに必ず姉はいるんですよねぇ?」


「全てにです」

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